記録的猛暑が韓国伝統市場を直撃 客足激減、対策遅れに募る商人の嘆き

記録的な猛暑が続く韓国の伝統市場で、商人の嘆きが深まっています。特にソウルでは、最高気温が37.8度を記録するなど118年ぶりの厳しさを迎え、多くの店舗で客足がぱったりと途絶えました。生鮮食品を扱う店では、商品の鮮度維持に苦慮しながらも売り上げが伸び悩み、商人はやきもきする日々を送っています。

今月8日、ソウル西大門区の独立門霊泉市場を訪れた際、10年間果物店を営む50代のパクさんは「まるで蒸し風呂のようなのに、お客さんが来るわけないでしょう。商売どころか、一日中ただ座ってるだけです」と商売の厳しさをため息交じりに語りました。午後6時を過ぎても市場内にはサウナのような熱気がこもり、野菜店の60代のキムさんは「暑すぎるせいか、一日中ほとんどお客さんがいない」と話し、外に並べた野菜が暑さで傷みやすいことへの懸念を示しました。

猛暑が直撃、生鮮食品に深刻な影響

魚、果物、野菜など温度に敏感な生鮮食品を扱う伝統市場の店舗は、猛暑による影響を特に強く受けています。高温により商品が傷みやすくなるため、品質を保つための努力が必要ですが、そもそも客足が減少しているため、その努力が売り上げに結びつきません。冷蔵・冷凍設備が限られる屋外の伝統市場では、この問題はより深刻です。

伝統市場の猛暑対策、進まぬクーリングフォグ設置

こうした状況に対し、全国の自治体は伝統市場向けの猛暑対策として蒸発式冷房装置、通称クーリングフォグの設置を進めています。しかし、その設置率は非常に低いのが現状です。ソウル市の伝統市場施設近代化事業の支援状況によると、ソウル市内418の伝統市場のうち、クーリングフォグが設置されているのはわずか13カ所(3.1%)に過ぎません。建物内や地下商店街など、比較的暑さの影響を受けにくい市場を除いた269市場で見ても、設置率は11カ所(4.1%)にとどまっています。

ソウル市の関係者は、昨年9カ所、今年4カ所の市場にそれぞれ1億〜4億ウォンをかけてクーリングフォグを設置したことに言及し、「現場の意見を聴取しながら、伝統市場向けの猛暑対策を策定している」と説明しています。

ソウル最大規模の広蔵市場でも冷房設備なし

ソウル市鍾路区にあるソウル最大規模の伝統市場、広蔵市場もまた、クーリングフォグなどの冷房設備がありません。9日に市場を訪れた際の状況は、市場の入口付近の店舗はまだ耐えられるレベルでしたが、チヂミなどを販売するフードエリアは、わずか10分立っているだけで額から汗が流れ落ちるほどの熱気でした。訪問客のキム・リゴンさん(28)は、「油を使って焼いたり揚げたりする店が多く、熱気がすごくて息をするのも大変だった」と当時の状況を語りました。

韓国ソウルの広蔵市場。猛暑により客足が減少し、閑散としている様子。冷房設備がないことが影響。韓国ソウルの広蔵市場。猛暑により客足が減少し、閑散としている様子。冷房設備がないことが影響。

景況感の悪化と消費クーポンへの懸念

小商工人市場振興公団が最近発表した景気動向調査によると、小商工人の今年7月の景況感指数(BSI)は76.2で、前月比2.9ポイント下落しました。BSI指数は100を上回ると景気が「良い」、100を下回ると「悪い」と判断されるため、これは景況感の悪化を示しています。調査に参加した小商工人の37.6%は、猛暑や梅雨など天候による「季節的な閑散期の要因」を景気悪化の主な原因として挙げています。

韓国政府は21日から全国民を対象とした「民生回復消費クーポン」の支給を予告しています。しかし、商人たちは、猛暑が続く中で消費者が熱中症のリスクを避け、室内店舗でクーポンを使うことを優先し、伝統市場が敬遠されるのではないかと懸念しています。

専門家「営業環境改善への支援強化を」

忠南大学経済学科のチョン・セウン教授は、政府の消費クーポンについて「市民が熱中症のリスクがある環境で消費クーポンを使うのは簡単ではない」と指摘しています。教授は、消費刺激策だけでなく、「伝統市場での営業環境を物理的に改善するための支援策を強化する必要がある」と提言しており、猛暑対策を含む環境整備が急務であることを強調しています。

猛暑は単に不快なだけでなく、伝統市場の経営に深刻な打撃を与えています。効果的な猛暑対策の遅れと、消費行動の変化への懸念が重なり、伝統市場の商人たちは厳しい夏を迎えています。景況感回復のためには、短期的な消費刺激策だけでなく、安全で快適な買い物環境を整備するための長期的な視点に立った支援が不可欠と言えるでしょう。

参考資料:
Yahoo!ニュース / 中央日報