東京都の不動産市場は依然として「バブル」と指摘される状況が続いていますが、一方で近い将来には人口のピークアウトが予測されており、不動産価格は駅によって「上がる駅」と「下がる駅」に二極化する見通しです。では、具体的にどの駅が「不動産価格が下がる駅」として考えられるのでしょうか。不動産コンサルティング会社のリーウェイズは、5億件もの物件データと、国土交通省のシンクタンクが2024年に公表した『将来人口・世帯予測ツール』を基に、全国の駅ごとの2025年と2035年の人口増減を予測し、10年後の変動を算出しています。
人口動態が不動産価格を左右する理由
不動産市場の動向に詳しい株式会社さくら事務所取締役副社長COOの山本直彌氏は、人口増減が不動産価格に直結する極めて重要な要素だと指摘します。不動産価格は基本的に需給バランスによって決定されるため、「人口が減少する駅は、その地域に住みたいという需要が低いことを示します」と山本氏は解説します。不動産投資の観点からも、人口減少は賃貸住宅へのニーズの減少を意味します。その結果、周辺の物件と比較して賃料を下げざるを得なくなり、賃料収入から得られる利回り(収益率)も低下してしまうと山本氏は付け加えています。
「立川以西」に集中:都心アクセスが鍵
東京都内で「ワースト200」にランクインした駅には、いくつかの顕著な特徴が見られます。山本氏によると、ワースト1位は高島平駅で、これは高齢化が主な原因と考えられます。その他の多くの駅は、牛浜駅(3位)、福生駅(4位)、熊川駅(8位)、河辺駅(11位)、拝島駅(13位)、東青梅駅(16位)など、JR立川駅より西側のエリアに集中しています。これらの駅は、都心部まで1時間以上かかる場所に位置しており、現在の「職住近接」というライフスタイルのトレンドと相反する点が、不動産価格の下落傾向として表れていると分析されています。
「逃げ場なき」モノレール沿線駅の課題
ワースト200ランキングには、特に他の鉄道路線への乗り換えアクセスが不便なモノレール沿線の駅が多数ランクインしています。多摩モノレール沿線では上北台駅(15位)、松が谷駅(21位)、程久保駅(28位)などが、日暮里・舎人ライナー沿線では江北駅(14位)、西新井大師西駅(92位)などが、東京モノレールでも昭和島駅(137位)、整備場駅(146位)などが入っています。
東京都の不動産価格下落が懸念されるモノレール沿線の駅周辺風景。アクセス不便が人口減少の一因に。
これらのモノレール路線に共通するのは、周辺に他の鉄道路線が少なく、いわば「逃げ場がない」という点です。例えば、多摩モノレールは立川北駅など一部の駅でしか乗り換えができず、日暮里・舎人ライナーは基本的に乗り換えが想定されていません。東京モノレールにおいても、天王洲アイル駅(ベストランキング119位)のように利便性の高い駅がある一方で、他の駅へのアクセスが困難な駅はワースト側に位置しており、同じ路線内でも明暗が分かれています。特に、電車が止まった際に代替の交通手段がない不便さは、敬遠される大きな要因となり、人口増加の足かせとなっている可能性が指摘されています。
まとめ
東京都の不動産市場では、全体的な「バブル」の状況とは裏腹に、将来的な人口減少を背景に、駅ごとの不動産価格の明暗が顕著になると予測されます。この予測の重要な指標となるのが、リーウェイズ社のAI分析に基づく駅ごとの人口増減です。人口減少は賃貸需要の低下、賃料の下落、ひいては不動産投資の利回り悪化に直結します。特に、都心へのアクセスに時間がかかる「立川以西」の駅や、他路線への乗り換えが不便で「逃げ場がない」モノレール沿線の駅が、今後10年で不動産価格が下落する可能性が高いとされています。これらの要素は、将来の不動産価値を判断する上で不可欠な視点となるでしょう。
参考文献
- リーウェイズ株式会社 (Leeways Inc.)
- 国土交通省 国土技術政策総合研究所 (National Institute for Land and Infrastructure Management, Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism)
- 株式会社さくら事務所 (Sakura Jimusho Co., Ltd.) – 山本直彌氏 (Naoya Yamamoto)