参院選の与党敗北リスク:日本株と経済への波紋

今週末に投開票を控える参院選は、メディア各社の世論調査で自民・公明の連立与党が苦戦していると報じられており、その結果次第では日本株に新たな重荷となる可能性が指摘されています。仮に与党が非改選議席を含め過半数を割り込む事態となれば、過去の経験則から市場の低迷が懸念されます。

過去のデータが示す与党敗北のリスク

ニッセイアセットマネジメントの松波俊哉チーフアナリストは、1989年以降の参院選後の東証株価指数(TOPIX)のパフォーマンスを分析。与党が過半数を維持した場合と割り込んだ場合で、株価の動向に明確な差が見られたと報告しています。特に、与党が過半数を割ったケースでは株価の低迷が長期化し、相場が底打ちするまでに35日から75日を要し、平均で約8%の下落を記録しました。このデータは、政治の安定性が日本株市場にとって極めて重要であることを示唆しています。

世界市場と比較した日本株の現状

足元の日本株は、トランプ米大統領による関税政策への懸念に加え、参院選を巡る政局混乱リスクが重なり、世界の株式市場に対しアンダーパフォームしています。円ベースで比較すると、先進国の株価で構成されるMSCIワールド指数とTOPIXは、米関税ショックで世界的に急落した4月以降、類似した動きを見せていました。しかし、7月に入るとMSCIワールド指数が上昇を維持する一方で、TOPIXは停滞傾向にあり、投資家心理の冷え込みが鮮明です。

参院選での演説に臨む政治家。選挙結果が市場に与える影響に注目が集まる。参院選での演説に臨む政治家。選挙結果が市場に与える影響に注目が集まる。

財政政策と国債市場への懸念

野党各党は、消費税減税や現金給付の拡大といった財政支出を伴う景気刺激策の必要性を強く訴えています。もし与党が敗北し、連立の組み替えや政権交代に至った場合、これらの政策が実現し、国債が増発される可能性が高まります。このような見通しは、投資家心理にとって大きな重しとなっており、すでに国内債券市場では売り圧力が強まっています。新発10年国債利回りは15日に17年ぶりの高水準に上昇し、外国為替市場では円が今月、対ドルで2.6%安となり、主要10通貨の中で最も弱い通貨の一つとなっています。

コーポレートガバナンス改革への影響

ここ数年の日本株の主要な押し上げ要因となってきたコーポレートガバナンス(企業統治)改革にも、マイナスの影響が及ぶリスクが浮上しています。世論調査で注目を集める参政党は、株主への利益還元が過剰である「金融中心の経済」からの転換を公約に掲げており、その政策スタンスが改革の方向性に影響を与える可能性も指摘されています。野村証券の北岡智哉チーフ・エクイティ・ストラテジストは、「連立の組み合わせ次第でコーポレートガバナンスに対する考え方が変わる可能性はあるものの、今のところ投資家はあまり注意していないようだ」と、市場の警戒感不足に懸念を示しています。

結論

参院選の結果は、日本株市場だけでなく、国債や為替市場、さらには長期的な経済政策の方向性にも大きな影響を与える可能性があります。過去のデータが示すように、政治の不安定化は市場の低迷を招きやすく、特に財政規律や企業統治改革に関する政策変更の動きは、投資家が今後注視すべき重要なポイントとなるでしょう。市場参加者は、投開票結果とその後の政局の動きを慎重に見極める必要があります。


参考文献

  • Bloomberg (2025年7月17日). 「参院選の与党敗北リスク、日本株に新たな重荷-過去の経験則示唆」. Yahoo!ニュース.