長年にわたり多くのギタリストに愛されてきた国産エレキギターブランド「FERNANDES(フェルナンデス)」を展開するフェルナンデス(埼玉県戸田市)が、2024年6月に再度破産を申請し、7月9日に東京地裁から破産開始決定を受けました。この決定は、東京商工リサーチ(TSR)が16日に発表したもので、伝説的なギタリストである布袋寅泰さんや元X JAPANのhideさんといった著名アーティストが愛用したブランドの終焉を告げるものとなります。
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「FERNANDES」破産開始決定の詳細と負債状況
東京商工リサーチ(TSR)によると、フェルナンデスの負債総額は約7億3千万円に上り、債権者は約60人に及びます。同社はエレキギター「FERNANDES」の販売を主軸に、ベースやアンプなどの楽器も幅広く取り扱っていました。製品の製造は基本的に外部委託されており、高品質な楽器を提供するために専門の職人育成学校も運営し、米国など海外市場への輸出も積極的に行っていました。この破産は、日本の楽器業界において大きな影響を与えることとなります。
栄光と衰退の軌跡:売上高40億円から赤字へ
フェルナンデスは、1999年1月期には年間売上高が40億円台に達するなど、その全盛期には確固たる地位を築いていました。しかし、2000年代に入ると中古市場の台頭や国内外での競争激化に直面し、業績は徐々に悪化の一途を辿りました。特に2022年1月期には、売上高がわずか1億6608万円にまで落ち込み、2414万円の最終赤字を計上する厳しい状況に陥っていました。
同社は2024年7月には一度事業停止を報じられ、破産申請を行いましたが、その後取り下げていました。しかし、経営状況の改善には至らず、今年6月に再度破産を申請し、今回の破産開始決定に至った形です。長期にわたる経営不振が、今回の決定の背景にあると言えるでしょう。
著名ギタリストとの深い絆と惜別の声
FERNANDESは、多くの著名アーティストとのライセンス契約を結び、その製品は彼らの音楽活動を支えてきました。特に、布袋寅泰さんは1985年にフェルナンデスとの共同作業で自身のオリジナルモデルを完成させて以来、長年にわたり同ブランドのギターを愛用していました。
フェルナンデスの事業停止が報じられた2024年7月、布袋さんは自身のインスタグラムに「時代と共に変化する僕のプレイスタイルを更新し続けることができたのは支えと協力があったからこそ」と、フェルナンデスへの深い感謝の言葉を綴りました。そして、「(事業停止は)とても寂しく残念に思います」と、その心情を率直に表現し、多くのファンに共感を呼びました。また、元X JAPANのhideさんも同社のギターを愛用していたことで知られ、その功績は今も語り継がれています。
なお、「FERNANDES」の商標の一部はすでに他社に譲渡されているとのことです。これにより、今後、ブランドの一部が異なる形で継承される可能性も示唆されています。
フェルナンデスの破産は、日本のエレキギター史における一つの時代の終わりを象徴する出来事と言えるでしょう。多くのギタリストの創造性を刺激し、日本の音楽シーンを彩ったFERNANDESブランドの歴史に、ここに一つの区切りが打たれました。