地震デマが日本観光に深刻な影:香港からの訪日客激減と航空便運休の実態

「7月に日本で大地震が起きる」という根拠のない風評が、日本の観光産業に依然として大きな影響を及ぼしています。日本政府観光局が16日に発表したデータによると、6月の香港からの訪日客数は前年同月比で33.4%減の16万6800人にとどまりました。デマで指摘された「発生日」である7月5日は既に過ぎたものの、香港と日本の地方空港を結ぶ航空便の減便は続いており、観光産業が風評に対して持つ脆弱性が改めて浮き彫りになっています。早急な対策が求められています。

航空便運休に追い込まれる地域路線

香港の格安航空会社(LCC)であるグレーターベイ航空は今月2日、香港と徳島空港、米子空港(鳥取県)を結ぶ国際定期便を、9月1日から当面の間運休すると発表しました。これは、大地震の風評によって客足が大幅に減少し、路線の維持が困難になったためです。昨年11月に週3便で就航した徳島便は、風評被害を受けて今年5月には既に週2便に減便されていました。この運休は、地方路線への直接的な打撃となっています。

観光地が直面する回復の難しさ

「7月5日」が過ぎた後、香港の一部旅行会社では訪日旅行に関する問い合わせが増加したとの報告もあります。しかし、徳島県観光誘客課の担当者は「(14日時点で)何か大きな変化があったとは聞いていない」と明かし、観光客の足がすぐに回復するわけではないという懸念を示しています。特に、修学旅行などの学生の教育旅行は計画が長期間にわたるため、一度キャンセルされると再度の誘致は容易ではありません。観光回復には継続的な努力が必要とされています。

訪日観光客で賑わう京都清水寺の様子。活気ある日本の観光地を示すイメージ。訪日観光客で賑わう京都清水寺の様子。活気ある日本の観光地を示すイメージ。

科学的根拠に基づく情報発信と政府の対応

徳島県は、香港向けのSNSアカウントを通じて、気象庁が発信している「デマには科学的根拠がない」という見解を紹介し、客足の回復に努めています。また、現在香港で開催中の書籍・文化の見本市「香港ブックフェア」(16~22日)にも出展し、観光PRを行いながら現地の感触を探る方針です。

観光庁は昨年11月に仙台市で、自然災害に強い観光産業のあり方について議論する国際会議「観光レジリエンスサミット」を開催し、共同宣言を採択しました。この宣言では、災害発生時の迅速かつ正確な情報収集・発信、そして風評被害対策の実施が盛り込まれていましたが、あくまで災害が発生した場合の対策であり、今回のような「災害が発生していない中での風評」は想定されていませんでした。観光庁は当面、「正確な情報発信」で対応する方針です。村田茂樹長官は16日の会見で、今回の風評被害に対し「これをやれば良いという解決方法があるわけではない。今回を教訓に、どういったことができるか考えてまいりたい」と述べ、抜本的な解決策の模索が必要であるとの認識を示しました。

まとめ

今回の「7月の大地震」に関する風評は、日本の観光産業、特に地方の国際路線に深刻な影響を及ぼしており、その回復には時間がかかることが予想されます。観光庁や地方自治体は、科学的根拠に基づいた正確な情報発信を強化し、観光客の信頼回復に努める必要があります。この事態を教訓に、今後同様の風評被害に迅速かつ効果的に対応できる体制の構築が喫緊の課題となっています。

参考文献