2018年に死刑が執行されたオウム真理教元代表・麻原彰晃こと松本智津夫元死刑囚の妻(66)と次男(31)が暮らすマンションを埼玉県警が家宅捜索し、現金数千万円が発見されたことが各紙で報じられました。この異例の捜索と大金の発見は、何を意味するのでしょうか。地下鉄サリン事件から30年を迎える中、依然として社会に影響を及ぼし続けるオウム真理教の後継団体「アレフ」の活動実態と、教祖の「血縁」が持つ影響力に改めて焦点が当たっています。
麻原彰晃元死刑囚が札束を手にしている様子。オウム真理教の活動資金や欲望を示唆する写真。
オウム真理教の現在:事件から30年、後継団体の動向
今年は地下鉄サリン事件から30年目の節目に当たります。1995年3月20日、オウム真理教の信者らが東京メトロの車内に神経ガスのサリンを散布し、14人が死亡、約6300人が負傷するという未曾有の化学テロ事件が発生しました。事件後、教祖の麻原彰晃元死刑囚をはじめとする教団幹部らが次々と逮捕され、2018年7月までに麻原を含む13人の死刑が執行されました。宗教専門誌「宗教問題」編集長の小川寛大氏は「多くの最高幹部が処刑されました」と語っています。
教団のスポークスマンを務めていた上祐史浩氏(現・ひかりの輪代表)は、有印私文書偽造などの容疑で実刑判決を受け出所後、オウムはアレフへと改称し、現在もオウムの後継団体として存続しています。上祐氏はかつてアレフの運営から麻原の家族を排除しようと試みたとされています。
麻原彰晃の「血縁」とアレフの資金源の謎
麻原元死刑囚の妻は、薬剤師リンチ殺人事件への関与で実刑判決を受け、2002年に出所後、アレフに接近していきました。麻原には4女2男の子供がおり、生前は自らの子を後継者とすることを望んでいました。この「教祖の血縁」という強い影響力により、最高幹部だった上祐氏よりも麻原の子供たちが教団内で上位に位置し、結果として上祐氏が排除されたと小川氏は分析します。
アレフは「オウム新法」(無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律)に基づく「観察処分」を受けており、麻原の家族が公式に加入していることはありません。しかし、小川氏は「教祖の血縁の影響力は教団内では依然として強い」と指摘。数年前から次男が教団を仕切るようになったという見方があり、さらに次男は母親の強い影響下にあることから、実質的に麻原の妻がアレフの実権を握っているとの声もあります。当局も、公式な情報がないため踏み込みにくかったのが実情です。
今回、その母子の住まいから数千万円の現金が見つかった経緯は、今年3月に公安調査庁がオウム新法に基づき、埼玉県越谷市にあるマンションへの立ち入り検査を試みたものの、母がこれを拒否したことに端を発します。公安調査庁からの告発を受けた埼玉県警が同法違反の容疑で家宅捜索を行った結果、大金が発見されました。果たして、アレフは一体どこでこれほどの巨額の資金を得ているのでしょうか。その資金源の不透明性は、後継団体の活動実態を巡る根深い問題を示唆しています。
結論
今回の麻原元死刑囚の家族宅における現金発見は、地下鉄サリン事件から30年が経過した今なお、オウム真理教の後継団体アレフが社会に潜在的な影響力を持ち続けていることを改めて浮き彫りにしました。教祖の「血縁」という特殊な影響構造、そしてその不透明な資金源は、引き続き社会の監視と当局の注視が不可欠であることを示唆しています。過去の悲劇を繰り返さないためにも、後継団体の活動実態や資金の流れに対する透明性の確保が強く求められます。