自衛隊が、秋田県知事からの要請に応じてクマ被害防止への協力を開始した。この協力は、昨今のクマによる被害増大に対する自治体の対応が限界に達しているとの判断に基づき、緊急避難的に行われるものだ。まずは、自衛隊の協力によって自治体のクマ対策が効果を挙げ、地域住民の不安が緩和されることを願ってやまない。
とはいえ、例え住民の不安が緩和されたとしても、それで物事を終わらせてはならない。まず、今後も予想されるクマ被害に対する自治体の対応力を強化することが先決だが、同時に、自衛隊によるクマ被害防止への協力を自治体の危機管理体制への警鐘であると認識し、これを改善する取り組みも必要だ。
不測事態への対応力の低さ
言うまでも無く、クマ被害防止は自治体の業務であり、一般的には自衛隊が担うべき業務ではない。これは、元陸上自衛官である秋田県知事も十分に理解しているはずだ。
それでも自衛隊派遣を要望した理由を知事は「県と市町村のみで対応できる範囲を超え、現場の疲弊も限界を迎えつつある」と説明している。秋田県のクマ出没マップでは、クマの目撃情報、痕跡情報および人身被害は県全域に及んでおり、目撃件数は10月だけでも5554件に上る。こうした情報や被害への迅速な対応を迫られる県、市町村、警察、ハンターなどの関係者の多忙さを慮れば、自衛隊への派遣依頼もやむを得なかったと言えるだろう。
そもそも、秋田県知事の言う「現場の疲弊」をもたらす大きな要因は、自治体職員の不足だ。自治体の職員数は平素の業務を遂行できる最小限の人数となっており、これは、効率的な行政という視点からは当然である。
しかし、クマ被害や大規模災害などの不測事態が発生すると、平素には無い業務が急増する。このため、自治体職員は平素の業務を行いながら急増した他の業務を行うことになり、大きな負担となる。特に地方の市町村では、限られた数の職員で多くの業務を行っており、不測事態への対応力は弱い。






