近年、社会の多様な変化と共に、「おひとり様」、特に中高年女性のひとり暮らしが大きな注目を集めています。2024年7月16日には、NHK総合の「あさイチ」とフジテレビ系の「サン!シャイン」という二つの人気番組が、偶然にも同じ時間帯に中高年層女性のひとり暮らしを特集し、その実態に迫りました。これらの特集の背景には、厚生労働省の「国民生活基礎調査」が示す単身世帯の増加傾向があります。昨年、日本の単身世帯は過去最多の1900万世帯に達し、全世帯の約3分の1を占めるに至っています。また、65歳以上の一人暮らしも903万1000人となり、前年比で47万8000人増加しているデータが報じられ、この新しいライフスタイルへの関心が高まっていることが伺えます。
中高年女性が自宅で快適なひとり暮らしを楽しむ様子
メディアが注目する「大人のひとり暮らし」の多様な実態
テレビ番組は、中高年女性のひとり暮らしが持つ多様な側面と、そのポジティブな可能性に光を当てました。「あさイチ」では、各年代の女性に密着し、具体的な生活の様子を紹介しました。例えば、離婚を経験しワンルームで自分好みの空間を創造する40代女性、団地をリノベーションして暮らす50代女性、そして実家を出てひとり暮らし歴20年という60代女性、さらには家中のモノを整理し心地よい空間を作り上げた70代女性など、それぞれのライフステージにおける「自由」で「快適」な生活が描かれました。
一方、「サン!シャイン」は、節約生活をブログで発信する70代の独身女性や、上京した女子大学生と自宅で「異世代ホームシェア」をする70代女性のひとり暮らしを取り上げました。これらの事例からは、ひとり暮らしが多様な形を取り、新たな交流や生き方を生み出している現状が浮かび上がります。番組の制作意図としては、様々なケースを通じて、視聴者に「大人のひとり暮らし」の参考となる情報を提供しようという姿勢が感じられました。
「寂しさ」だけではない!中高年女性のひとり暮らしのポジティブな側面
中高年層の女性がひとり暮らしをすると聞くと、「寂しいのではないか」「経済的に貧しいのではないか」「もしもの時に不安ではないか」といった懸念が抱かれがちです。しかし、長年お悩み相談のコンサルタントとして多くの女性からヒアリングをしてきた経験や、番組で紹介された当事者たちの声からは、意外なほどポジティブな側面が明らかになっています。
「あさイチ」「サン!シャイン」ともに、中高年期のひとり暮らしを前向きに楽しむ女性たちの姿を強調していました。当事者たちは口々に「自由」「気楽」「快適」「やりたいことが何でもできる」「思うままに生きられる」「一人だけの部屋に愛着がある」と語り、皆が笑顔を見せていたのが印象的です。特に、離婚や死別、子どもの独立を機にひとり暮らしになった女性たちからは、「自炊や片付けを手抜きできる」といった実用的なメリットを挙げる声も多く聞かれました。中には、「若い頃はひとり暮らしなんて寂しくて考えられなかったが、今は気負わずにありのまま素直に歳を取れる」と、自身の考え方を改めたという人も存在します。これは、ひとり暮らしが単なる状況ではなく、自らの人生を主体的にデザインする「選択」であることを示唆しています。
まとめ:多様な価値観が育む「おひとり様」という生き方
中高年女性のひとり暮らしは、単に家族構成の変化の結果として捉えられるだけでなく、多くの女性にとってポジティブで主体的な生き方の選択肢となりつつあります。社会の高齢化や多様なライフスタイルの広がりを背景に、単身世帯の増加は今後も続くことが予想されます。このような状況下で、テレビ番組が積極的に「おひとり様」の多様な側面を取り上げ、具体的な事例を提示することで、このライフスタイルへの理解を深め、抱かれがちなネガティブなイメージを払拭する役割を果たしていると言えるでしょう。経済的な課題や「もしも」の不安といった側面も存在しますが、それらに対しても、社会的なサポートや個々の工夫によって乗り越える道が開かれていく可能性があります。中高年女性の「おひとり様」は、これからの社会における新しい価値観と生き方を象徴する存在として、ますます注目されていくことでしょう。
参考資料
- Yahoo!ニュース (東洋経済オンライン): 「あさイチ」と「サン! シャイン」が中高年の“おひとり様”特集をぶつけたワケ | 東洋経済オンライン (2024年7月19日公開)