ジャーナリストの江川紹子氏がX(旧Twitter)に投稿した内容に対し、一般ユーザーから思わぬリプライが寄せられ、その「的外れ」な内容が大きな話題を呼んでいます。江川氏は15日、「事実が間違っているという具体的な指摘もないまま、『偏向報道』などという、ふんわり漠然とした非難によって、国政政党が批判的報道を封じ込めようという手法には、全力で抗っていきたい」と投稿。これは、TBSの『報道特集』に対する参政党からの「偏向報道」批判を受けたものと見られています。この投稿に対し、ある一般ユーザーが「知ってますか?かつてTBSはオウム真理教ってテロ集団に反対する活動をしていた弁護士の情報を流し、その弁護士の幼児を含めた一家を丸ごと殺〇したことを…」とリプライを付けたのです。この信じられない内容に、ネット上では「史上最強のオウムキラーに向かってなにほざいてんだ?」「江川紹子にオウムを教えるのは極めつけだな」「マイケルジャクソンにスリラーってヒット曲知ってますか?と尋ねるくらいの衝撃」といった驚きとツッコミの声が相次ぎました。
江川紹子氏とオウム真理教、そしてTBSビデオ事件の真実
ジャーナリストである江川紹子氏は、オウム真理教が社会問題として浮上する以前から、その危険性を指摘し、深く関わってきた人物です。そのため、今回のリプライは、江川氏のこれまでの功績や経験を全く理解していない、歴史認識の欠如を示すものとして批判の的となりました。特に注目すべきは、リプライが言及している「TBSビデオ事件」です。
1995年3月の地下鉄サリン事件を含む一連のオウム真理教事件後、警察の捜査が進む中で、TBSの「大失態」が明らかになりました。政治ジャーナリストによると、1989年10月、TBSのワイドショー番組『3時にあいましょう』がオウム真理教問題を取り上げようとしましたが、教団側の取材が難航し、企画は頓挫します。この過程で、番組スタッフが、当時オウム真理教を批判していた坂本堤弁護士のインタビュー映像を、教団側に見せていたことが発覚したのです。映像が教団側に渡ってからわずか9日後、坂本弁護士とその妻、そして1歳の長男の3人が神奈川県内の自宅から拉致され、行方不明になる事件が発生しました。後に彼らは殺害されていたことが判明します。この情報提供がなければ事件が起きなかった可能性も指摘され、この一連の出来事は「TBSビデオ事件」として社会的に大きな問題となりました。
ジャーナリスト江川紹子氏のX(旧Twitter)投稿。オウム真理教に関する議論で誤解を招いたコメントが話題に。
オウム真理教問題における江川紹子氏の貢献と直面した危機
江川紹子氏は、オウム真理教に入信してしまった子どもの親から相談を受け、彼らに坂本弁護士を紹介していました。その後、オウム問題が顕在化すると、江川氏は連日のようにジャーナリストの有田芳生氏と共にワイドショー番組などに出演。当時の教団の広報責任者だった上祐史浩氏などと激しい舌戦を繰り広げ、教団の正体や事件の真相を社会に伝え続けました。
江川氏自身もオウム真理教から命を狙われており、1994年9月には自宅に毒ガスであるホスゲンを噴射される殺人未遂事件の被害者となっています。また、その翌年である1995年には、オウム真理教関連の取材全般における功績が評価され、権威ある菊池寛賞を受賞しています。約30年前の出来事ではありますが、江川氏は当時、メディアの最前線でオウム真理教と対峙し、その問題点を深く追求してきたジャーナリストです。
「釈迦に説法」:ネット上の無理解なコメント
このような歴史的背景と江川紹子氏の揺るぎない貢献を鑑みると、今回の一般ユーザーによるリプライが「釈迦に説法」であることは明白です。このコメントは、過去の重大な事件に関する知識の欠如を露呈し、ジャーナリストとしての江川氏の役割と危険に晒された経験を完全に無視したものでした。インターネット上での情報発信が容易になった現代において、歴史的な事実や個人の深い関わりを軽んじた、このような無責任なコメントが拡散されることへの警鐘とも言えるでしょう。正確な情報に基づいた健全な議論の重要性が改めて浮き彫りになりました。