7月20日投開票の参議院選挙で主要な争点の一つとなっている「外国人問題」を巡り、TBS系『報道特集』における山本恵里伽アナウンサーの発言が波紋を広げ、SNS上で大きな炎上を巻き起こしています。この問題は、公共の電波を用いた報道のあり方、特に選挙期間中の公平性・中立性について、改めて議論を呼び起こしています。
『報道特集』山本恵里伽アナの発言が炎上 – 参院選の争点「外国人政策」巡り
7月12日に放送された『報道特集』は、「争点に急浮上“外国人政策”に不安の声」と題し、外国人政策に関する議論を取り上げました。番組内で、山本恵里伽アナウンサーは、「日本人ファースト」を掲げる参政党を紹介する際、外国人差別に詳しい大学教授へのインタビュー中に「“日本人ファースト”という言葉がかなりひとり歩きしている印象。ヘイトスピーチとは違うのでしょうか?」と質問しました。
さらに番組の終盤、山本アナは「外国人政策が争点に急浮上する中で、これまではそこまで注目されていなかった強硬な主張が急に支持を集める、であるとか社会が決して受け入れてはこなかった排外的な、差別的な言葉がSNSで拡散していく、そういった現実に正直すごく戸惑いを感じています」と自身の見解を表明しました。続けて「実際、外国籍の人とまったくかかわらずに生活をする人はほとんどいないと思うんです」と前置きし、「自分の1票が、ひょっとしたらそういった身近な人たちの暮らしを脅かすものになるかもしれない。これまで以上に想像力を持って投票しなければいけないなと感じています」とコメントしました。この発言が、特定の政党への投票行動を誘導する意図がある、あるいは中立性を欠くものと受け取られ、SNSで批判が殺到しました。
参政党・NHK党からの反発と波紋
この放送を受けて、参政党は放送内容の訂正を求めるとともに、放送倫理・番組向上機構(BPO)への申し立てを行うことを表明しました。また、今回の参院選に立候補しているNHK党の浜田聡参院議員も自身のX(旧Twitter)で「報道特集 山本恵里伽アナを国会に呼んで、この発言に関する説明を求めたい」と投稿するなど、その波紋は政治の場にも広がっています。
この浜田議員の投稿に対し、元フジテレビアナウンサーの長谷川豊氏が「呼ぶべきです 選挙中の放送ですので、放送法第4条に抵触している可能性が極めて高い 悪質な放送の典型 番組のPとTBS社長も併せて呼ぶべき」とリポストし、問題の深刻さを強調しました。
長谷川豊氏が指摘する「報道のプロ」としての問題点
元アナウンサーとして、長谷川氏は今回の山本アナの発言を「100%アウトというレベル」と厳しく評価しました。
番組側の「一方的な主張」とキャスターの役割
長谷川氏は、『報道特集』の放送内容自体が「番組側の主張が一方的過ぎたし、強過ぎた」と指摘。VTRの内容も「若干、攻め過ぎ」だったとしながらも、最も問題視したのは、VTRが「暴走してしまったときに、それを正すのがアナウンサーであり、キャスターの役割」であるにもかかわらず、山本アナがその「フォローができていなかった」点でした。
例えば、キャスターは「一部の外国人が日本人に恐怖を感じさせているようなこともあるかもしれません。他方、参政党が多くの人から支持を得て、いま勢いづいているということも間違いなくて、それにはこんないいところ、こんな主張が実際にありますよ」「今回の参院選で、参政党は大きく議席を伸ばすとされており、台風の目となりそうです」といった形で、中立的な立場から状況を補足し、視聴者に多角的な情報を提供すべきだったと長谷川氏は述べます。
「両論併記」の重要性とその欠如
長谷川氏は、本来キャスターはこのような「基礎的な教育」を受けているはずだとし、山本アナがこれを実践できなかったのは、そうした教育が「されていないまま、あそこに座ってしまっているのかな」という印象を受けたと語っています。2016年にTBSに入社し、今年で9年目になる山本アナですが、長谷川氏は「9年じゃ無理かな。9年で『報道特集』は、そもそもミスキャストかなという気がしますね」と、番組の重責に対するアナウンサーの適性を疑問視しました。
元フジテレビアナウンサー長谷川豊氏、テレビ報道の公平性について語る。
長谷川氏は、テレビという「公共の電波」は「利権であり、公共の財産」であると強調。「いちアナウンサーが自分の意見を言う場所ではない」と断言し、テレビの役割は「いろんな意見がありますよというのを並べて、視聴者に判断してもらうというところ」にあると解説しました。
山本アナの発言が台本によるものかアドリブかという点については、「おそらくVTR後の尺調整で喋っているので、僕はアドリブだと思いますね」と推測。しかし、アドリブであっても「テクニックの問題」であり、出版業界でいうところの「両論併記」ができていれば問題なかったと指摘。「そこを欠いたのが、炎上の最大の原因」であると結論付けました。長谷川氏は山本アナに同情しつつも、キャスターという職業が「視聴者には関係ないし、それも含めて背負わなきゃいけない」責任を伴うものであると述べ、山本アナに批判の矛先が向かうのは「仕方ないことなのかな」と語っています。
炎上から学ぶ公共放送のあり方
今回の山本アナの発言炎上は、参議院選挙という重要な局面において、テレビ局が担う公共の役割と、ニュースキャスターの倫理が改めて問われる事態となりました。視聴者への多角的かつ公平な情報提供の重要性、そして放送法が定める「政治的に公平であること」の原則を再確認する機会と言えるでしょう。
責任ある報道機関とキャスターは、個人の感情や特定の主義主張に偏ることなく、多様な意見を提示し、視聴者自身が判断を下せるような情報環境を提供することが求められます。