「セミ幼虫乱獲」各地で再燃する公園トラブル:過去事例と多言語化の背景

東京都江東区の都立猿江恩賜公園で、セミの幼虫が「乱獲」されているとの報道が波紋を広げている。公園に掲示された注意喚起の張り紙が、日本語に加え、中国語、韓国語、英語の4か国語で書かれていたことで、SNS上でも大きな話題となった。この問題は、近年各地の公園で散見されるようになっており、過去の事例を振り返ることで、その背景と各自治体の対応の実態が見えてくる。

「食用目的」に焦点:猿江恩賜公園の多言語張り紙の背景

産経新聞の報道によれば、猿江恩賜公園ではここ数年、公園利用者から管理会社に対し「セミの幼虫が食用目的で大量に採取されているのではないか」との苦情が寄せられていたという。これを受け、セミの羽化が本格化する6月末に約30枚の「セミの幼虫を採取しないでください。子供達がセミを楽しみにしています」という張り紙が掲示された。特に、その文言が多言語で表記されていた点は、この問題の背景に多様な文化圏の人々の利用実態があることを示唆している。この報道はX(旧Twitter)上で2日間で約450万回閲覧され、「今年セミが鳴かないね」「セミはエビに似た味がするらしい」といった様々な反響を呼んだ。

東京都江東区の猿江恩賜公園に掲示されたセミ幼虫採取禁止の多言語ポスター。食用目的の記載はないが、乱獲への懸念を示す。東京都江東区の猿江恩賜公園に掲示されたセミ幼虫採取禁止の多言語ポスター。食用目的の記載はないが、乱獲への懸念を示す。

繰り返される「セミ捕り禁止」の過去事例を検証

今回の猿江恩賜公園の件は、決して孤立した事例ではない。過去には埼玉県川口市や東京都荒川区の公園でも同様の「セミの幼虫採取禁止」の注意書きが掲示され、中には「食用目的での」という文言が明記されたものもあった。

埼玉県川口市の「1シーズン限定」掲示

埼玉県川口市では、2018年6月に市内の青木町公園を含む2か所の公園に、「食用としてセミの幼虫等の捕獲はやめて下さい」と明記された看板を設置した経緯がある。市公園課管理係によると、これは市民からの苦情や研究者からの情報に基づいた対応だった。この看板はセミのシーズン終了後に撤去され、翌年以降は再設置されていないことから、一定の効果があったと見られている。

荒川区尾久の原公園の「存在不明」問題

一方で、東京都荒川区の都立尾久の原公園では、2020年8月に「セミ幼虫捕獲禁止」という日本語とともに、より大きな中国語表記、そして日本語の下に中国語と英語で「食用を目的としたセミの幼虫等の捕獲はやめてください」と書かれた張り紙の写真がSNSで拡散された。しかし、尾久の原公園サービスセンターの担当者は、現在のところ「そういった張り紙の掲示はない。その存在も知らない」と述べ、過去の掲示について認識がないことを明かした。この情報の食い違いは、公園管理における情報の引継ぎや認識のあり方に課題があることを示唆している。

公園利用における課題と今後の展望

セミの幼虫乱獲問題は、単に生物保護の観点だけでなく、都市部の公園における多文化間のマナーや意識の違いという課題を浮き彫りにする。特に「食用目的」という側面が、より複雑な背景を持つことを示している。各自治体の対応が異なる中、この問題への統一的なアプローチや、利用者へのより効果的な啓発方法が求められる。

東京都江東区の猿江恩賜公園で再び報じられたセミの幼虫乱獲問題は、日本各地で繰り返し発生している。食用目的での採取や多言語での注意喚起の必要性は、国際化が進む社会における新たな課題を示唆する。今後も、地域住民と自然環境、そして多様な人々が共存できる公園のあり方について、継続的な議論と適切な対応が求められるだろう。

参考文献

  • 産経新聞「都立公園で『セミの幼虫を採取しないでください』と多言語表記で張り紙 食用目的の乱獲か」
  • デイリー新潮「セミのチリソース炒め、タコス、親子串揚げ…「セミ乱獲禁止」ポスターが物議の裏にある“魅惑のメニュー”」
  • Yahoo!ニュース(上記記事の掲載元)