セブン&アイ、買収の嵐去るも株価低迷で「次なる標的」リスク増大か:事業改革の喫緊性

カナダのコンビニエンスストア大手アリマンタシォン・クシュタールによる買収提案が撤回され、セブン&アイ・ホールディングスを悩ませた1年間の攻防は幕を閉じました。しかし、株価の大幅な下落は同社を再び「お買い得」な企業に変え、新たな買収の標的となるリスクを高めています。市場の信頼を取り戻し、企業価値を向上させるためには、抜本的な事業変革が喫緊の課題となっています。

セブン&アイホールディングスの事業と市場状況を背景にしたイメージセブン&アイホールディングスの事業と市場状況を背景にしたイメージ

株価下落と再燃する買収リスク

クシュタールによる敵対的買収提案によって一時的に上昇していたセブン&アイの株価は、提案撤回が発表された17日に約10%下落し、翌18日も続落しました。この株価の低迷は、同社が再び株式公開買い付け(TOB)や敵対的買収の対象となる可能性を示唆しています。日本株に広く投資するGCIアセット・マネジメントの池田隆政シニア・ポートフォリオ・マネジャーは、株価が下がれば買収リスクは高まると指摘し、株主からの批判は避けられないとの見方を示しています。

クシュタールが提示した1株あたり2600円という買収価格は、セブン&アイが短期間で自力で到達するには困難な水準でした。この状況は、経営陣が参加する買収(MBO)を創業家主導で試みたことからも明らかであり、当時の経営陣の危機感が窺えます。

大規模な株主還元策と市場の評価の限界

セブン&アイは、市場の信頼を回復し、企業価値を高めるために大規模な株主還元策を打ち出しています。2026年下半期までに米国でコンビニ事業を運営する子会社を新規株式公開(IPO)し、そこで調達した資金などを用いて、2030年度までに総額2兆円の自社株買いを実施する計画を発表しました。また、厳しい事業環境下にもかかわらず、今期は増配を見込んでいます。

しかし、これらの施策に対して、市場の評価は厳しいものがあります。岩井コスモ証券の菅原拓アナリストは、セブン&アイがすでに多くの手を打っている現状から、これ以上の投資家対応による企業価値向上は難しいと分析しており、株主還元策だけでは根本的な解決には至らない可能性を示唆しています。

コンビニ事業の自力成長への喫緊な課題

残された主要な道筋は、国内外のコンビニ事業における自力での成長です。しかし、足元の業績は依然として厳しい状況にあります。2025年3月から5月期の営業利益は前年同期比で9.7%増の651億円となりましたが、過去10年の四半期ベースで見ると、最低水準だった前年に続く低調な結果となっています。

国内の既存店売上高はほぼ前年同月並みの状態が続き、競合他社に成長率で差をつけられているのが現状です。米国事業においても、未だマイナス成長から抜け出せておらず、今期の米国での増益予想も、不採算店の閉鎖などコスト削減策によって捻出されている側面が強く、本質的な成長とは言い難い状況です。

経営改革の喫緊性と企業価値向上の展望

クシュタールによる買収提案の撤回は一時的な安堵をもたらしたものの、セブン&アイ・ホールディングスが直面する課題は山積しています。株価の低迷が続く限り、再び買収の標的となるリスクは常につきまといます。大規模な株主還元策だけでは市場の評価を根本的に変えることは難しく、コンビニ事業の自力成長こそが企業価値向上と買収防衛の鍵となります。今後は、国内外事業の収益力強化と新たな成長戦略の実行により、持続的な企業価値向上を達成し、真の意味での市場の評価を得ることが求められています。

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