第2次トランプ米政権の発足から半年が経ち、米株式市場は高値圏へと回復を見せています。当初、トランプ大統領が矢継ぎ早に打ち出した高関税政策に市場は振り回されましたが、米景気の底堅さを追い風に、一段高への期待も膨らんでいます。しかし、連邦準備制度理事会(FRB)議長解任のリスクや、関税交渉の不透明性は依然として強く、この上昇基調が続くかどうかは予断を許しません。
トランプ政権の高関税と金融市場の動揺
トランプ氏が4月2日にほぼ全ての国・地域を対象とする相互関税を発表したことで、金融市場は一時、大荒れの展開となりました。通商摩擦激化への不安から、株・債券・ドルの全てが売られる「トリプル安」に見舞われ、市場に大きな動揺を与えました。政権は慌てて相互関税の軌道修正を試みたものの、二転三転するトランプ氏の発言に市場は戸惑いを隠せないままでした。この一連の動きは、政治の動きが直接的に市場心理に影響を与える典型例となりました。
堅調な企業業績と株価の回復
そうした不透明な状況下でも、堅調な企業業績を好感した買いが市場を支えました。ハイテク株中心のナスダック総合指数は今月に入り史上最高値を相次いで更新し、ダウ工業株30種平均も、成長志向のトランプ氏復権に沸いた昨年12月の最高値に迫る勢いを見せています。米航空大手からは「非常に安定している」との楽観的な声も聞かれるなど、足元の経済環境に対する前向きな見方が広がっています。
トランプ政権下の米株式市場の動きを見守るNY証券取引所のトレーダー
忍び寄るインフレ圧力とFRB介入リスク
市場の期待が高まる一方で、関税はじわりと物価を押し上げています。6月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.7%上昇と、伸び率が2カ月連続で拡大しました。関税に伴うドル安基調も「インフレ圧力を幾分高める」(FRB高官)と警戒されており、物価上昇が経済の足かせとなる懸念も指摘されています。
さらに、米メディアが今月16日、トランプ氏が利下げに慎重なパウエルFRB議長を解任する可能性を報じ、市場に新たな緊張をもたらしました。トランプ氏は解任を否定したものの、FRBへの利下げ要求を強める姿勢は変わっておらず、米国の信認を揺るがし、「トリプル安」再燃につながりかねない中央銀行への露骨な介入に市場は神経をとがらせています。
不透明な関税交渉の行方
来月1日が新たな税率の発動日となる相互関税を巡っては、日本を含む各国との協議も未だ着地点が見えていません。多くの不確定要素を抱える中、市場では「大きなショックが起これば相場は簡単に急落する」(アナリスト)との観測もくすぶっています。株価が高値圏にある現在、投資家はトランプ政権の次なる一手、そしてそれが市場に与える影響を注意深く見守っています。
結論
第2次トランプ政権発足後、米株式市場は企業業績の堅調さを背景に回復基調にあります。しかし、高関税政策に伴うインフレ圧力、FRBへの政治的介入リスク、そして不透明な通商交渉の行方など、依然として多くの不確定要素を抱えています。これらのリスク要因が市場に与える影響は大きく、今後の政治経済情勢の動向が米株式市場の安定性、ひいては世界経済の先行きを左右する鍵となるでしょう。
参考文献
- Source link (時事通信)