トランプ前米大統領は7日、ウクライナ侵攻を続けるロシアに対し、制裁を次の段階へと移行させる準備があることを示唆しました。米政府はロシア経済への圧力を強め、長期化する紛争の打開を図る狙いがあるものとみられます。この動きは、ウクライナが国際社会、特に米国からのさらなる支援を強く求める中で行われています。
米国、対露制裁強化の可能性を示唆
ワシントンからの報道によると、トランプ前大統領はホワイトハウスで記者団に対し、ロシアへの制裁強化に関する準備が「ある」と述べ、一段と厳しい措置を示唆しました。これに続き、ベセント財務長官はNBCテレビの番組で、米国と欧州連合(EU)が連携し、ロシア産原油購入国への制裁や関税引き上げを実行すれば、「ロシア経済は完全に崩壊する」と警告を発しました。これは、ロシアの経済基盤を根本から揺るがす可能性のある、極めて強力な警告と受け止められています。
2025年9月7日、ロシア軍のミサイル攻撃により煙が立ち上るウクライナの首都キーウの様子。米国の対露制裁強化論議の背景にある深刻な被害を示す。
キーウへの攻撃とウクライナの強い要請
このような米国の動きと時を同じくして、ウクライナの首都キーウ中心部では、ロシア軍による6日夜から7日朝にかけての攻撃により、政府庁舎に甚大な被害が出ました。こうした状況を受け、ゼレンスキー大統領は7日、「ロシアに対する強力な制裁が必要だ。米国からの反応を期待している」と国際社会、特に米国に向けて改めて支援を強く要請しました。ウクライナ国民は、度重なる攻撃に直面し、国際的な連帯による具体的な行動を待ち望んでいます。
ロシアへの圧力と長期化する「持久戦」
トランプ政権が制裁強化を匂わせる背景には、ロシアへの圧力をさらに強め、プーチン大統領をウクライナ和平交渉の席に着かせるという明確な狙いがあります。トランプ前大統領はこれまでも度々制裁強化に言及してきましたが、直接的な強硬措置には踏み切っていません。しかし、今回の発言は、今後の外交交渉における米国の姿勢をより明確に示すものとなります。ベセント財務長官は現在の状況を、ウクライナ軍とロシア経済のどちらが長く耐えられるかという「持久戦」であるとの認識を示しており、国際社会の支援がウクライナの抵抗力を支える上で極めて重要であると指摘しています。
2025年9月7日、ニューヨークで記者団に対応するトランプ米大統領。ウクライナ侵攻への対応として対露制裁強化を示唆した。
結論
トランプ前米大統領による対露制裁強化の示唆は、ウクライナ侵攻を巡る国際情勢の新たな局面を提示しています。キーウへの攻撃が続く中で、ウクライナは国際社会、特に米国の断固たる対応を強く求めています。この「持久戦」が今後どのように展開し、ロシアの経済やプーチン大統領の戦略にどのような影響を与えるのか、国際社会は注目しています。