20日に行われた日本の参議院選挙の投開票の結果、国内主要メディアの出口調査や開票状況に基づくと、与党である自民党と公明党は議席を大きく減らし、非改選議席を含めた参議院全体(定数248)での過半数(125議席)維持が微妙な情勢であることが報じられました。これにより、石破茂首相に対する責任論が高まることが予想されていますが、石破首相は「比較第1党の責任はよく自覚していかなければならない」と述べ、続投の意向を示したと受け止められています。今回の参院選は、日本が物価上昇とアメリカからの関税の脅威に直面する中で実施され、その結果は今後の日本の政治情勢に大きな影響を与えることになります。
参院選開票日の夜、自民党本部で記者団の質問に答える石破茂首相の姿。与党の議席減が報じられる中、厳しい表情で今後の政権運営について言及した。
参院選結果速報:与党の議席減と野党の躍進
与党が参議院で過半数を維持するためには、自民・公明両党合わせて改選議席のうち50議席を確保する必要がありましたが、NHKをはじめとする国内メディアは、その達成が困難な情勢だと報じています。複数の報道機関によると、開票が進むにつれて自民党と公明党の獲得議席が、改選議席の過半数である63議席に届かないことが確実となりました。自公両党は、2012年の政権復帰以降に行われた4回の参院選では、いずれも改選過半数の議席を確保してきました。
今回の選挙では、改選前の自民党の議席は52、公明党は14でしたが、ともに大幅に議席を減らす見込みです。一方で、野党側では立憲民主党が改選20議席を上回る勢いを見せ、国民民主党(改選4議席)と参政党(同1議席)も、大幅に議席を増やすことが確実な状況とされています。共同通信の発表によると、同日午後9時の推定投票率(選挙区)は57.50%で、前回2022年の52.05%を約5ポイント上回る可能性があります。NHKの推定でも、57.91%前後になる見通しとされています。
衆参「ねじれ国会」と石破首相の政治責任
現在、衆議院ではすでに与党が過半数を割り込んでいます。NHKによると、もし参議院でも与党が過半数を割る状況となれば、自民党を中心とする政権にとって、衆参両院で少数与党となるのは、1955年の結党以来初めての事態となります。
自民党総裁である石破首相は、今回の参院選で与党全体で50議席確保を目標に掲げていました。もしこの目標を達成できなければ、石破氏の首相退陣論が強まり、日本の政情が不安定になる可能性が指摘されています。
石破首相は20日午後10時ごろのNHKの生放送インタビューで、与党での過半数確保が困難な情勢について問われると、「この厳しい情勢というもの、本当に謙虚に真摯に受け止めなければいけないと思っています」と述べました。選挙戦で掲げた目標を達成できなかった場合の進退を含めた責任については、「まだ開票が続いていますので、あまり軽々なことは申し上げられないと思っています」と語りました。それが続投を意味するのかという問いに対しては、「最終的な結果をみなければどうにもなりませんが、責任というものをきちんと果たすということはよく自覚したい」と回答しました。
若い有権者を引きつける参政党の台頭
今回の選挙で特に注目されたのは、若い有権者を引きつけるためにソーシャルメディアを積極的に活用してきた参政党の人気の高まりです。世論調査によると、同党の掲げる「日本人ファースト」のスローガンは、一部の保守派層の心をつかんだとみられています。しかし、同党の外国人に対する強硬な姿勢は、同時に批判も呼んでいます。
参政党は、移民に関して厳格な規則と制限を主張しています。また、「グローバリズム」と「過激な」ジェンダー政策に反対し、脱炭素化とワクチン接種に関しても見直しを求めています。新型コロナウイルスのパンデミック中にYouTubeで注目を集め、ワクチンに関する陰謀論や、「闇のエリート層が世界で暗躍している」といった陰謀論を拡散してきた歴史があります。
自民党への有権者の不満と政権の不安定化
今回の選挙結果の見通しは、コメの価格を含めた生活費の高騰やアメリカとの通商交渉など、難問が山積する中で、石破首相に対する有権者の不満を浮き彫りにするものとなりました。石破首相は国民の信頼を得るのに苦戦している現状が示されています。
多くの有権者は、自民党にまつわる一連の政治スキャンダルにも、強い不満を抱いています。過去に参議院で過半数を失った自民党の首相3人はいずれも2カ月以内に辞任しているという歴史があり、それだけに多くの専門家は、今回の参院選で自民党が大きく後退した場合も同様の展開になると予測してきました。
仮に石破首相が退陣するとなった場合、昨年の自民党総裁選で石破氏に次ぐ2位となった高市早苗氏、元経済安全保障担当相の小林鷹之氏、小泉純一郎元首相の息子である小泉進次郎農水相など、自民党の他の有力議員らが党首選に出馬する可能性が出てきます。与党の指導者交代は、アメリカとの通商交渉が重要な局面を迎える中で、日本政府に政治的な混乱をもたらし、不安定化させるのは確実です。
外国人問題と「オーバーツーリズム」の波紋
与党・自公に対する支持は、右派の小規模政党である参政党によって浸食された側面もあります。「日本人ファースト」や反移民的な主張で保守層の票を集めた同党は、外国人住民や移民政策が今回の選挙戦で争点の一つとなる中、その極端で排外的なレトリックによって支持を広げました。
孤立主義的な文化と厳格な移民政策で知られる島国・日本では近年、「オーバーツーリズム」と呼ばれる観光客急増による国内の日常への影響が課題となっています。また、外国人住民の数が過去最多を記録しており、こうした外国人の流入急増のため日本人の生活費がこれまで以上に高騰している、あるいは外国人が日本を利用しているといった不満が、国内の一部で高まっています。
こうした状況を背景に、石破首相は先週、「一部の外国人による犯罪や迷惑行為」に対処するためのタスクフォースを立ち上げています。対象とする問題には、移民、土地取得、社会保険料の未払いなども含まれています。
今回の参議院選挙の結果は、日本の政治が転換点を迎えていることを示唆しています。与党の議席減、野党の台頭、そして首相の求心力への疑問は、今後の政権運営に大きな影響を与えるでしょう。特に、経済問題や外国人問題など、国民の不満の根源にある課題への対応は、石破政権にとって喫緊の課題となります。
参照元
- BBC News (英語記事: Japan’s ruling party set to lose majority, exit polls suggest / Japan heads to polls in key test for Prime Minister Shigeru Ishiba)
- Yahoo!ニュース (元記事: https://news.yahoo.co.jp/articles/52e9910a185dd305d57624bda6ca33f1ed3010b6)