日本の関東大震災における朝鮮人虐殺事件と、韓国の5・18光州民主化運動。これら二つの歴史的出来事を「国家暴力」という共通の観点から分析し、歴史的・心理学的な視点から和解の道筋を模索する学術セッションが開催されます。このセッションは、ソウル大学で開催される「国際和解学会2025ソウル大会(IARS 2025 Seoul Conference)」の一環として行われます。
特別セッションの詳細
国際和解学会は、対立や紛争後の正義回復と和解をテーマに、学際的な研究成果を共有する国際的なカンファレンスです。2020年に設立され、大陸別に持ち回りで大会を開催しており、ソウル大会は第6回目となります。今回の特別セッションは、社団法人心理健康研究所が主催し、財団法人シアルが主管します。
セッションはソウル大会2日目となる7月15日午後4時30分から開催され、「国家暴力と歪曲、そして和解ー関東(大震災における)朝鮮人虐殺と5・18(光州)民主化運動を中心に」と題されています。この場では、国家暴力の再発防止と和解の方法が、歴史学と心理学の観点から深く議論される予定です。
国際和解学会2025ソウル大会のポスター。「国家暴力と歪曲、そして和解ー関東(大震災における)朝鮮人虐殺と5・18(光州)民主化運動を中心に」と記されている
各登壇者の発表内容
セッションでは、複数の専門家がそれぞれの視点から発表を行います。
5・18記念財団のイ・ジェウィ研究委員は、「5・18光州民主化運動の歪曲と和解案」をテーマに発表します。イ研究委員は、過去45年間にわたる5・18の歪曲の実態を時系列で検証し、真の和解に至る道を探求します。発表では、5・18に関する社会的記憶の歪曲を是正するための政策提言と、市民社会の果たすべき役割が提示される見込みです。
市民研究者のパク・チョニル氏は、「国家暴力の観点から見た関東大虐殺と5・18」について発表します。1923年9月の関東大震災時に発生した朝鮮人虐殺では、日本人自警団、軍、警察などが6千人以上の朝鮮人を殺害しました。当時、「朝鮮人が放火や暴動を起こした」というデマが政府や警察によって放置・助長されたにも関わらず、現在に至るまで日本政府からの公式な謝罪はありません。パク氏は、国家暴力と虐殺の相互関連性を改めて問い直し、このような悲劇を繰り返さないためにどのような社会的環境や条件が必要なのかを考察します。
心理健康研究所のキム・ソグン所長は、「国家暴力の歪曲と和解の心理的メカニズム」に焦点を当てます。キム所長は、認知的不協和、権威への服従、集団偏向といった、歴史や事実の歪曲を引き起こす心理的な原因を分析します。そして、回復に向けた共感、道徳的責任、回復的正義といった心理的要因を中心に、和解のためのメカニズムに関する分析結果を発表します。
特別セッションには、建国大学人文学研究院のキム・ジョンゴン研究教授が討論者として参加し、議論を深めます。
社団法人心理健康研究所顧問で、全南大学心理学科名誉教授のオ・スソン氏
セッションの司会を務めるオ・スソン心理健康研究所顧問(全南大学心理学科名誉教授)は、この特別セッションが「国家暴力の記憶と真実を正し、被害者中心の和解の可能性を模索する学術交流の場となること」への期待を表明しています。
歴史的な暴力とそれに伴う記憶の歪曲という複雑な問題に対し、歴史学と心理学という学際的なアプローチから和解の道を探るこのセッションは、現代社会における重要な課題解決に向けた貴重な議論の機会となるでしょう。