廃棄ビニール傘がスタイリッシュなバッグに生まれ変わる:PLASTICITYの革新

雨の日を過ぎると、街角には大量の廃棄されたビニール傘が残されます。使い捨て文化の象徴とも言えるこの傘に新たな命を吹き込み、スタイリッシュなバッグへとアップサイクルしている日本のブランドがあります。それが「PLASTICITY(プラスティシティ)」です。PLASTICITYのファウンダーであるAki氏は、この廃棄物問題にデザインと機能性で挑んでいます。手に取ると驚くほどの軽さ(幅28cmのトートでわずか120g)と、曇りガラスのような独特の風合い、そして雨や汚れに強い実用性を兼ね備えたこのバッグは、まさに廃棄ビニール傘から生まれています。「このバッグが傘からできていると知らずに買って、驚かれる方もいます」とAki氏は語ります。

年間約8000万本:深刻化するビニール傘の廃棄問題

日本国内では、年間およそ8000万本ものビニール傘が廃棄されていると言われています。安価で便利である一方、壊れやすかったり、忘れ物として回収されたりすることで、気軽に捨てられてしまう現状があります。ビニール傘は、ビニール素材だけでなく、金属製の骨やプラスチック製の持ち手など、複数の異なる素材で構成されています。この異素材が組み合わさっていることが、一般的に消費者が分別しにくく、また専門業者にとっても分解に手間がかかるため、リサイクルが進まない大きな要因となっています。このようなビニール傘の大量廃棄は、近年深刻な社会問題として注目されています。

忘れ物から製品へ:PLASTICITYのアップサイクル工程

この深刻な廃棄ビニール傘問題に対するPLASTICITYの取り組みは、商業施設や駅などで忘れ物・落とし物として回収された傘を引き取り、それらをバッグの素材として活用することから始まります。回収された傘は、まずビニール部分と骨部分が一点ずつ手作業で丁寧に分解・分別されます。金属製の骨部分は通常のリサイクルルートに戻され、ビニール部分は洗浄されます。洗浄されたビニール素材は、東京や埼玉、栃木にある提携工場へと運ばれ、特殊なプレス作業や縫製作業を経て、一つの高品質なバッグへと生まれ変わります。

廃棄ビニール傘からバッグを生み出す日本のアップサイクルブランド、PLASTICITYのファウンダーAki氏廃棄ビニール傘からバッグを生み出す日本のアップサイクルブランド、PLASTICITYのファウンダーAki氏

「GLASS RAIN」素材の個性とデザイン性

PLASTICITYのトートバッグ一つを作るためには、約4本分の廃棄ビニール傘が使用されます。何層にも重ねてプレス加工されたオリジナルの生地は「GLASS RAIN」と名付けられています。この生地には、まるで窓ガラスを伝う雨粒のような独特のラインが自然に生まれます。この模様は一点一点異なり、バッグそれぞれに異なる表情と個性をもたらします。また、傘の金具が付いていた部分にわずかに残るサビの色なども、PLASTICITYでは廃材ならではの魅力的な個性として、余すところなくデザインに取り入れています。このサビの跡さえも、世界に一つだけのバッグのアクセントとして輝くのです。環境問題への貢献だけでなく、このような高いデザイン性とファッション性が多くの人々から支持を集め、今では年間2万本もの廃棄ビニール傘を回収し、製品としてアップサイクルするまでに成長しています。

使われている素材も製造方法も非常にユニークなPLASTICITYのバッグですが、Aki氏によれば、この革新的な製品の形にたどり着いた道のりは、まるで人生における偶然の重なりによる結果なのだといいます。