20日投開票の参院選において与党が議席を大幅に減らす見通しとなり、野党が重点的に訴えてきた物価高対策としての消費税減税が現実的な政策課題として浮上しています。しかし、各党の減税案は対象品目や期間が多様であり、次期政権の枠組み次第でその実現の道筋は大きく変わると予想されます。一方で、市場では、減税による財政膨張への懸念も強まっており、今後の動向が注目されます。
野党各党の消費税減税案と与党の立場
主要10政党のうち、野党8党が参院選の公約で消費税減税を掲げました。特に注目されるのは、食料品の税率を0%とする案で、立憲民主党は原則1年間、日本維新の会は2年間の時限措置としてこれを主張しています。
全品目の減税を訴える勢力も4党あり、国民民主党は物価変動の影響を除いた実質賃金が持続的にプラスとなるまでという条件の下で、消費税の一律5%への引き下げを提唱しています。これに対し、自民党と公明党は消費税を「社会保障の重要な安定財源」と位置づけ、今回の参院選では物価高対策として1人当たり2万~4万円の現金給付を打ち出しました。
減税実現への道筋と財源確保の課題
選挙結果を受けた今後の政権の枠組みが、消費税減税の議論の進展を左右します。与党が連立拡大を模索したり、野党の主張の一部を受け入れる可能性があり、その場合、減税に向けた議論が一気に加速することも考えられます。政策面で実現可能性が高いと目されるのは、立憲民主党と日本維新の会が掲げる期間限定の食料品消費税0%案です。公明党も参院選公約からは外したものの、元々同様の案の検討を主張しており、自民党の一部にも同調する動きが見られます。
東京都練馬区のスーパー店頭に並ぶ、消費税減税の対象となり得る飲料や調味料、缶詰などの食料品
最大の課題は、年間5兆円規模に上る代替財源の確保です。立憲民主党は政府基金の取り崩しや外国為替資金特別会計(外為特会)の剰余金などで必要額を賄う算段を立て、日本維新の会は税収の上振れを代替財源として見込んでいます。
財政悪化と日本経済への懸念
一度税率を引き下げると、元の水準に戻すことは極めて困難とされています。日本経済の減速懸念が強まる中、税収の安定的な確保は見通しが立ちにくい状況です。債券市場では財政悪化への警戒感が強まっており、長期金利には上昇圧力がかかっています。将来の日本の財政のあり方に関する議論は、ますますその重要性を増しています。
消費税減税を巡る議論は、家計の負担軽減という国民の期待と、財政健全化という国家の持続可能性という二つの側面の間で、複雑な舵取りを迫られることになります。今後の政治的な交渉と経済状況が、日本の消費税政策の方向性を決定づけるでしょう。