日産アリアの大幅値上げ:EV市場の「古古古米」化を象徴か

現代のEV(電気自動車)市場において、価格変動は消費者の購買意欲を大きく左右する要因となっています。特に注目されているのが、2022年に登場した日産アリアの大幅な値上げです。かつて備蓄米である「古古古米」が新米と並んで高騰した例えが示すように、日産アリアもまた、登場当初と比べてその価格が大きく上昇し、市場に大きな波紋を広げています。本稿では、日産アリアの価格推移と、それがEV市場に与える影響について深く掘り下げます。

日産アリアのB6・2WDとB6 e-4ORCEモデル。価格高騰が話題のEV市場を象徴する一台。日産アリアのB6・2WDとB6 e-4ORCEモデル。価格高騰が話題のEV市場を象徴する一台。

日産アリアの市場動向と現状評価

日産アリアは、その先進的なSUVスタイルと電気自動車としての性能で登場当初から注目を集めました。しかし、その後の販売戦略と価格改定は、消費者にとって複雑な状況を生み出しています。

基本データと発売経緯

2021年6月に特別仕様車のリミテッドが先行発売されたアリアは、当初から納期の遅延やグレード選択の制限がありました。しかし、2024年3月にはB9 e-4ORCEプレミアを含む全グレードが選択可能となり、さらに高性能モデルのNISMOもラインアップに追加されました。2025年1月から5月までの累計販売台数は753台を記録しており、中古車市場では2022年式が約285万円から約594万円で取引されています。

注目すべき価格高騰の背景と影響

アリアの価格変遷において最も大きな焦点となっているのが、B6・2WDモデルの価格推移です。2021年11月の発表時の価格は539万円でしたが、受注停止期間を経て2024年3月に販売が再開された際には、659万100円へと大幅に値上げされました。

この120万円もの値上げは、国のEV購入補助金が増額(2021年時点の85万円から現在は89万円)されたことを考慮しても、非常に大きいと言えます。車両の機能や性能に基本的な変化がないにもかかわらず、これほどの価格上昇があったことで、アリアのコストパフォーマンスに対する割高感が顕著になり、購入検討者にとって大きな懸念材料となっています。

日産アリアの総合評価と市場への示唆

アリアの各項目における評価は、登場時と現在で大きな変化はありませんが、「コスパ(コストパフォーマンス)」だけが大きく低下しています。

項目 登場時 現在
パワーユニット 7点 7点
ハンドリング 8点 8点
乗り心地 6点 6点
運転支援機能 7点 7点
コスパ 5点 3点

総評として、日産アリアは優れたパワーユニットやハンドリング、運転支援機能を備えているものの、その「味」や走行性能以上に「値上げ」の問題が大きくクローズアップされています。これは、消費者がEVに求める価値が、単なる性能だけでなく、価格とのバランスにも強く依存していることを示唆しています。

まとめ

日産アリアの大幅な値上げは、EVの普及を目指す市場において重要な課題を提起しています。技術革新による性能向上もさることながら、手の届きやすい価格設定がいかに重要であるかを再認識させる出来事と言えるでしょう。今後、日産がこの価格戦略にどう対応し、消費者の信頼を維持していくのか、EV市場全体の動向と共に注目が集まります。


参考文献

  • ベストカーWeb (2025年7月26日). 日産 アリア、その乗り味より値上げが気になる状況.
    Source link
    ※本稿は2025年6月の情報に基づき、初出『ベストカー』2025年7月26日号の内容を参考にしています。
    ※中古相場は荻原文博氏調べ。
    ※2025年累計販売台数は1〜5月のデータです。