新型コロナウイルス感染拡大の影響で令和2年1~3月期の成長率がマイナスとなる中、各企業は感染拡大のダメージが長期化することを警戒している。4~6月期は20%超のマイナス成長となる恐れもあり、経済活動が早期に本格化するとの見方は少ない。中国経済の復調など前向きな動きもあるが、中長期的に人々の生活全体が大きく変容してしまう可能性もあり、各社は新たなビジネスモデルの模索も進める。
「(経営環境は)一層厳しい状況になり、収束後も回復は緩やかになる」
世界的な鋼材需要の低迷に直面する日本製鉄の橋本英二社長は8日、今後の経営環境に危機感を示した。2年3月期連結決算は過去最大の最終赤字で、2年4~9月期も「大きな赤字は避けられない」という。
企業が先行きに悲観的なのは感染拡大が世界全体のヒト、モノ、カネの流れを停滞させているからだ。ANAホールディングス(HD)の福沢一郎常務は「(収益は)年度末時点でも5~7割の回復にとどまる」と話す。ホテル事業を手掛ける近鉄グループHDの安本幸泰専務執行役員は「(ホテル事業は)ゼロから見直す」とする。
世界経済をめぐっては中国で経済活動が再開されるなどの前向きな動きもある。ホンダの倉石誠司副社長は「(中国市場は)活発化してきており、受注も非常に好調に推移している」とみる。ただ、米国市場は「非常に厳しい販売状況が続いている」といい、先行きへの不安は拭えない。
こうした海外経済の動向に加え、4~6月期は4月の緊急事態宣言に基づく外出自粛要請の影響が加わる。感染拡大が収束したとしても人々の生活が大きく変わってしまい、ビジネスのあり方自体が変化を迫られる可能性すらある。
牛丼チェーン「すき家」やファミリーレストラン「ココス」などを運営するゼンショーHDは今後の出店計画を策定中。丹羽清彦執行役員は新型コロナ後の新しい生活様式の中で、「どの業態を加速させるのかを検討しなければならない」と話している。