ハローキティやシナモロールなど、世界中で愛されるキャラクターを数多く生み出してきたサンリオ。その経営の舵取りを担う辻朋邦社長は、就任当初「七光り」との冷ややかな視線を浴びながらも、圧倒的な手腕で同社を過去最高益へと導きました。本記事では、サンリオの抜本的な経営改革を成功させた辻社長の軌跡と、その背景にある真のリーダーシップに迫ります。
サンリオが直面した『カリスマ経営』の課題
サンリオは、創業者の辻信太郎氏が92歳で社長の座を孫である辻朋邦氏に譲るまで、長らく「カリスマ経営」の典型と見なされていました。世間には、親子や一族の血筋によって地位を得た者が、あたかも本物のリーダーのように振る舞い、事業を傾かせる例が少なくありません。ぽっちゃりとして人の良さそうな外見の辻朋邦氏が2020年にサンリオの社長に就任した際も、多くの人々は彼が経営者として成功すると予想しませんでした。創業者が築き上げた財産を、無能な後継ぎが浪費して家をつぶすというジンクスが、サンリオにも当てはまるのではないかという懸念が広がっていたのです。
危機感をバネにした変革への洞察
辻社長は、いきなりトップに就任したわけではありません。父親の急逝を受け、2014年にサンリオに入社。まずは経理部に配属され、その後国内のライセンス営業を担当しました。当時のサンリオは、ハローキティの欧米での大ヒットにより過去最高益を記録し、株価も上昇していました。しかし、投資家や社内からは危うさを指摘する声も上がっていました。当時CLSA証券のアナリストだったロラン・アルモス氏は「ブランドは素晴らしかったが、十分活用されておらず、売り上げは伸びていなかった」と語っています。辻社長自身も、入社後すぐに「キャラクターの人気は高いが、包括的な戦略や長期的なブランディングがほとんどないと感じた。この先、この会社はどうなるのかと危機感を覚えた」と当時の心境を振り返ります。
『脱ハローキティ依存』:新戦略と改革の成果
辻社長は、この強い危機感を原動力に変え、サンリオの抜本的な改革に着手しました。彼は、ハローキティ一辺倒だった戦略を見直し、「複数キャラクター戦略」へと転換。さらに、商品点数を適正な数に減らすなど、事業の効率化を徹底しました。これらの大胆な経営改革は、創業者が築き上げた基盤の上に胡坐をかくのではなく、時代に合わせた新たな価値創造を目指すものでした。その結果、サンリオは赤字から脱却し、過去最高益を達成。辻社長は、血筋ではなく確かな経営手腕によって、自らが「七光り」ではないことを証明し、サンリオという「カワイイ王国」を再び成長軌道に乗せることに成功したのです。
サンリオの辻朋邦社長が笑顔でポーズを取る姿、同社の経営改革と過去最高益達成を象徴
サンリオの辻朋邦社長は、就任時の懐疑的な見方を覆し、卓越したリーダーシップと戦略的改革により同社を再成長させました。彼の軌跡は、表面的な肩書きや血縁を超え、真の能力と「逆境に打ち勝つガッツ」こそが企業を成功に導くという強力なメッセージを伝えています。サンリオの未来は、今後も辻社長の革新的な経営手腕によってさらに輝かしいものとなるでしょう。
参考文献:
- Yahoo!ニュース: 多くの日本企業が抱える「弱点」のいち早く克服し、赤字から脱却。カワイイ王国2代目社長・辻朋邦は「七光り」ではない──. (2025年7月21日掲載). https://news.yahoo.co.jp/articles/7e6a0df4d9b6a5e5442e7a6c22b5d704e86ce45e