日本保守党の北村晴男参院議員が、公明党の自民党との連立離脱の背景に中国共産党の影響があると示唆した発言が、政界で大きな波紋を呼んでいます。この発言に対し、公明党の元衆院議員である伊佐進一氏がX(旧Twitter)上で証拠の提示を求め、双方の主張が対立。連立協議の過程、そしてその背後にあるとされる国際関係にまで議論が及んでいます。この論争は、日本の政治における連立のあり方、そして国際情勢が国内政治に与える影響を改めて浮き彫りにしています。
北村晴男氏の「中国操縦説」と公明党への批判
北村晴男参院議員は10月10日に公開したYouTube動画で、公明党が自民党に連立解消を伝えた背景には中国共産党の強い影響があるとの見解を示しました。これに対し、10月15日に公開された「公明党からの批判にお答えします」と題した動画では、「客観的には中国共産党の指令に基づいて連立を離脱したように見える。それはいかがのものかということ。私は、そのように推測しているという風に申し上げた」と、自身の発言が推測に基づくものであることを改めて説明しています。
公明党の連立離脱を巡り「中国操縦説」を唱える北村晴男参院議員
さらに北村氏は、自民党の高市早苗新総裁が「一方的に離脱を伝えられた」としている自公連立協議の過程に疑問を呈しました。公明党が連立解消の要因とされる「政治とカネ」の問題で1年以上協議を続けてきたと説明しているにもかかわらず、「高市氏の回答を3日、4日待てないはずはない」と指摘。また、「突然、今日のうちにもう結論を出せ、今すぐ結論を出せ、3日待てないんだと。相手が党内議論が必要であるということを分かっていながら、今すぐ結論を出せというのは、私から見れば言葉は悪いですが……まるで反社のやり方ですね、これは。ありえないです」と公明党の姿勢を強く批判しました。
公明党側の反論と高市氏の「一方的」主張
北村氏の批判に対し、公明党側は反論しています。公明党の斉藤鉄夫代表は、10月15日の朝日新聞のインタビューで、高市氏の「一方的」という主張について「一方的には伝えていない」と否定しました。斉藤氏によると、連立協議の過程で、高市氏が就任した10月4日から「政策協議が調わなければ離脱」と伝え、10月7日の協議では「『政治とカネ』の問題をめぐり了解するための明確な線」を明示したとのことです。しかし、「10日が最後だと前もって言ってはいなかったが、それでもこの問題に対する具体的な提案は高市氏から何もなかった」と斉藤氏は語り、公明党側の対応には十分な事前説明があったことを強調しました。
「不自然」の根拠:高市氏の南モンゴル発言と中国の反応
北村氏が自公連立協議の過程を「不自然」だとした根拠として挙げたのは、10月9日に発生したある出来事でした。それは、高市氏が中国・モンゴル自治区の人権問題に関する国際フォーラムに、「今なお、南モンゴルにおいて中国共産党による弾圧が続いていることに憤りを禁じ得ない」とのメッセージを寄せていたことです。
北村氏は、高市氏の発言は「中国共産党にとっては怒り心頭でキレまくる話」だと解説。それ以前から中国共産党が高市氏を危険視する中で、モンゴルに関するメッセージが出されたことで、同党内で「高市新総裁誕生阻止」の機運がピークに達したと説明しました。続けて、「共産党とあれだけ仲のいい公明党ですから、中国共産党の意を受けて連立を離脱した。3日を待たずに離脱したというのは、ほぼ間違いないんじゃないか、と私は推測していますよ」と、自身の「中国操縦説」の蓋然性を主張しました。
さらに、斉藤代表が10月11日に出演した動画メディア内で、駐日中国大使と面会した際の内容について問われ、「外交問題でもあり、控えさせてもらいたい」と話していたことについて、北村氏は「(大使と)高市さんについて話したことを否定しなかったということですね」と意味深なコメントを残しています。
ネット上の反応と伊佐元議員からの再反論
北村氏の主張が「推測」に基づいている点や、「反社のやり方」という過激な表現に対し、X上では一部から疑問の声が上がっています。「毅然とした対応を公明党に取って頂きたいと切に思います。反社は行き過ぎかと…」「『反社のやり方』という過激な表現は、支持者向けのサービスにはなるが、論点を歪め、国民の分断を深めるだけ。注目を集める言葉より、正確な認識と公正な議論こそ政治家に必要な姿勢のはず。残念」「自分の今まで発言に対してのなんの証拠も出してこず、個人の感覚での発言!これが弁護士、国会議員の発言か?ふざけるな!」「公明党から正式に抗議されたら確実に謝罪・撤回を余儀なくされるレベルの暴言」といった批判が見受けられます。
また、公明党の伊佐進一元衆院議員は10月16日、Xで改めて反論を展開しました。「公党に対して『反社』と指摘されて論理を展開されておられます。これは、控えられた方が良いと思います。対応は党に任せます。いちいち反論致しませんが、北村先生が根拠とされる10月9日の『南モンゴル議連』での高市さんのメッセージ。これに激怒した中国が、公明党に離脱を迫ったんだ、とのこと。しかし、斉藤代表が中国大使と会ったのは10月6日です。事実に基づき反論頂きたく」と述べ、北村氏が根拠とする高市氏のメッセージの日付(9日)と、斉藤代表が中国大使と面会したとされる日付(6日)との時間的な矛盾を指摘し、事実に基づいた議論を求めました。
公明党側は、党が運営するYouTubeチャンネル内で北村氏と“ノーカット”で議論することを提案しており、今後の動向が注目されます。
結論
北村晴男参院議員による公明党の連立離脱に関する「中国操縦説」および「反社のやり方」との発言は、日本の政治に大きな波紋を広げています。北村氏の主張は、高市早苗氏の南モンゴルに関する発言と中国共産党の反応、そして公明党の連立協議における姿勢を「不自然」と捉え、「推測」に基づくものです。これに対し、公明党側は連立協議の経緯を説明し、「一方的ではない」と反論。伊佐進一氏が、北村氏の根拠とする事象の時間的矛盾を指摘するなど、事実に基づいた検証が求められています。
この論争は、今後の自公連立の再構築の可能性、そして日本の国内政治における国際的影響力の議論を深めることとなるでしょう。各方面からのさらなる説明と、提案されている公開討論を通じて、真実がどこにあるのかが明らかになることが期待されます。