7月20日に行われた参議院議員選挙は、与党自民党にとって厳しい結果となり、改選前から大きく議席を減らし、非改選議席と合わせても与党で過半数を割るという異例の事態に見舞われました。この“大敗”とも言える選挙結果を受け、石破茂首相(68)は翌21日の記者会見で「結果を謙虚に真摯に受け止めなければならない」と陳謝しつつも、熟議の国会運営への意欲と「赤心奉国」の思いを表明し、続投の意向を示しました。しかし、記者からの「いつまで続投するのか」との質問には「期限は今考えていない」と述べ、人事についても「現時点で考えを持っているわけではない」と回答するにとどまり、その進退を巡る混乱が深まっています。
参院選大敗:三連敗が突きつける責任
石破首相が直面するこの厳しい状況は、今回の参院選の結果だけに起因するものではありません。昨年秋の首相就任直後に行われた衆議院議員選挙では自公両党が過半数を割り込み、今年6月の東京都議会議員選挙では自民党が過去最低議席となり第一党の座から陥落するなど、今回の参院選を含め「三連敗」を喫しています。首相就任以前からの旧安倍派を中心とした「裏金問題」や「旧統一教会問題」といった“負債”の影響も指摘されていますが、党内からは政権運営の責任を問う声が日増しに強まっています。
開票直後の20日夜には、かねてより“犬猿の仲”として知られる自民党の麻生太郎最高顧問が周囲に「石破首相の続投は許さない」と語ったと報じられ、高知県連、山梨県連、山口県連などの地方組織が早期退陣を申し入れることを決定するなど、「石破おろし」の流れが顕在化しました。
辞任報道と首相の否定:激化する「石破おろし」
そのような中で、23日午前には毎日新聞が「石破首相、退陣へ 8月末までに表明 参院選総括踏まえ」と報じ、日米間の関税交渉(自動車を含む全米輸出品目に関税率15%で合意)の行方とも絡め、複数のメディアが石破首相の退陣意向を同様に伝えました。しかし、同日夕方に自民党本部で行われた麻生太郎氏(84)、菅義偉自民党副総裁(76)、岸田文雄前首相(67)との三者会談後、石破首相は「『強い危機感を共有した』としつつ、私の出処進退は一切、話は出ていない」と改めて退陣報道を真っ向から否定しました。
しかし、ある全国紙の政治部記者は、「3人の首相経験者との会談後に退陣を否定したことで、一時的な“延命”には成功したと見てもよいでしょう。だが、依然として党内から退陣を求める声は強く、関税交渉を花道に8月中には辞任するのではないかとの見方が依然として有力です」と語り、このまま“任期満了”となる可能性は低いと見ています。
過去の「ブーメラン発言」が首相を追い詰める
石破首相をさらに苦しめているのは、彼の過去の発言が現在の自身の状況に重なり、「ブーメラン」のように突き刺さっている点です。遡ること2007年、当時の安倍晋三首相が参院選惨敗後も続投の意思を示した際、石破氏は「国民への説明がつかない」と強く退陣を要求しました。同年8月2日付の『夕刊フジ』のインタビューでは、《総理は自分で辞めると言わない以上、誰も辞めさせられない。首相が退陣せねば、自民党が終わってしまうという気持ちは変わらないが、終わらないようにしないといけない》と発言しています。さらに、報道陣から「(辞める)べきか?」と問われた際に「べきはべきさ」と答えた当時の映像は、現在もSNS上で拡散され続けています。
石破首相、過去の「ブーメラン発言」により厳しい局面を迎える様子。
現在の石破首相が続投を明言し、退陣を否定する姿に対し、X(旧Twitter)上では、過去の彼の発言を引用する形で以下のような声が多数上がっています。
- 「そんな事言ってたのか。僕もべきだと思いますよ」
- 「石破茂くん、『べきはべき』思い起こせ自身の発言」
- 「やめる『べき』なのはやめる『べき』ってことだよね 石破が安倍晋三に対して言っていたことがブーメラン」
自身の過去の発言が、まさしく「ブーメラン」となって彼自身に返ってきている石破首相。参院選惨敗と党内外からの圧力が渦巻く中、彼は一体どのような形でこの難局に“ケジメ”をつけるのでしょうか。その進退が、今後の日本政治の大きな焦点となっています。
参考文献
- 『毎日新聞』 2024年7月23日付 報道
- 『夕刊フジ』 2007年8月2日付 インタビュー記事
- 全国紙政治部記者の見解
- SNSプラットフォーム X(旧Twitter)上の投稿