日本が米国との関税交渉を終えた今、韓国は最後の総力戦に突入し、どのような成果を引き出せるかに国際社会の注目が集まっています。一部では、まだ開催されていない首脳会談での直接交渉の可能性も指摘されていますが、十分な準備のない拙速な会談に対する懸念も少なくありません。まさに日本が合意した同日、フィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領が直接トランプ大統領と会談したにもかかわらず、関税をわずか1%ポイントしか引き下げられずに帰国した事例は、厳しい交渉の現実を示唆しています。
ドナルド・トランプ米大統領がホワイトハウスで共和党議員を前に演説、強硬な貿易政策を示唆するジェスチャー
フィリピン大統領、急遽訪米も僅かな成果に終わる
トランプ大統領は日本との関税合意発表のわずか6時間前、自身のSNSに「フィリピンが米国に市場を開放し、関税をゼロにする貿易協定を締結した」と投稿しました。しかし、その直後に「一方、フィリピンは(米国に)19%の関税を支払うことになる」と付け加えました。フィリピン側からすれば、20%の関税通告を受けた直後に自国の大統領が急遽訪米したにもかかわらず、関税を1%ポイントしか引き下げられず、結果的に4月に通知された17%よりも高い19%の関税率を提示されるという屈辱的な展開となりました。
フェルディナンド大統領は、まるで「屏風の飾り」のように座らされ、トランプ大統領が米国の記者団と主に国内政治問題を議論するという、トランプ氏特有の「テレビショー形式」の記者会見に耐える羽目になりました。通常、両首脳の冒頭発言のみが公開される首脳会談とは異なり、トランプ大統領は約40分にわたり記者の質問を受け続けました。記者団は米国内問題のみを質問し、フィリピン大統領は発言の機会すらほとんど得られず、米国の国内政治論争を黙って見守ることになりました。
同盟国日本も直面したトランプ流交渉の現実
フェルディナンド大統領が会談で米国との同盟関係を繰り返し強調したにもかかわらず、トランプ大統領は「フィリピンはイスラム国(ISIS)とテロリストであふれていたが、私の任期中に彼らを完全に掃討した」「もし私が関与していなかったら、今誰があなた(フィリピン)の大統領だったか分からない」と発言し、同盟関係よりも自身の功績を強調しました。
この日、米国との関税交渉の合意にこぎつけた石破茂首相もまた、首脳会談で「屈辱」を味わいました。石破首相は、トランプ政権発足直後の2月に続き、先月カナダで開催されたG7(主要7カ国)首脳会議の際にもトランプ大統領と会談していました。日本政府は長年の同盟関係を盾に関税交渉に自信を見せていましたが、会談後には既存の24%よりも1%ポイント高い25%が記された「関税通告書」を突きつけられました。
特に、先月のG7をきっかけとした会談以降、トランプ大統領は「日本は非常に甘やかされてきた(very spoiled)」などと日本に圧力をかけ続けました。今月20日の参議院選挙を控えていた石破首相は「極めて遺憾だ」と強く反発し、とりわけ日本の基幹産業であるコメについては「農業を犠牲にするというようなことは一切含まれていない」と断固たる姿勢を示していました。それにもかかわらず、石破氏は選挙で惨敗し、政治的危機に陥りました。そしてトランプ大統領はこの日、SNSで日本との関税交渉の妥結を一方的に公表し、「日本がコメや特定農産物を含む貿易を開放することにした」と書き込みました。
日本の交渉結果が韓国に与える重い負担
日本の交渉結果は、今後の韓国にとって大きな負担要因となります。日本が相互関税を25%から15%に引き下げたことは、韓国にも交渉の余地があることを示唆すると同時に、主要同盟国であっても15%という決して低くない関税が適用されうるという事実を明確にしました。
特に日本は、米国が一貫して高関税を要求していた自動車の関税を25%から12.5%に引き下げる代わりに、国内で「死守」を掲げてきたコメ市場を差し出しました。外交消息筋は、「韓国が自動車関税を引き下げられない場合、最大の対米輸出品である自動車市場が打撃を受けることは避けられないが、かといってコメ市場を開放すれば政府は政治的危機に陥る」と述べ、米日交渉の具体的な内容を綿密に分析する必要性を強調しました。
また、日本が投資を約束した5500億ドル(約80兆円)がアラスカ液化天然ガス(LNG)開発に投入される可能性があり、その場合、韓国も同様の投資要求を受ける可能性があります。アラスカLNG開発は、その事業性が不透明との評価も出ています。金正官(キム・ジョングァン)産業通商資源部長官は訪米期間中、ダグ・バーガム国家エネルギー委員会議長兼内務長官、クリス・ライト・エネルギー長官、ハワード・ラトニック商務長官らと面談する予定です。
インドネシアの事例に見る包括的規制撤廃の要求
同日公開された米国とインドネシアの交渉詳細も、韓国に重要な示唆を与えます。インドネシアは相互関税を既存の32%から19%に引き下げる代わりに、米国産自動車や農産物、医薬品に対する実質的なすべての規制を免除しました。さらに、データ流通に対する課税も中断することに同意しました。これは、自動車の非関税障壁撤廃、農産物市場開放、プラットフォーム法の撤廃など、米国が韓国に求めている内容と大部分が一致しており、今後の韓国の貿易交渉の方向性を示すものと言えます。
首脳会談のジレンマ:拙速な決断の危険性
韓国外交界では以前から、「政治的決断が必要な案件が争点になるに従い、最終的に大統領が出るしかない」とする主張と、カナダや日本のように首脳が出た後に高関税を通告された前例を理由に、「拙速な会談は危険だ」とする意見が交錯してきました。
これに関連し、トランプ政権1期目で米国通商代表部(USTR)の代理代表を務めたステファン・ヴォーン弁護士は同日、ワシントン特派員団との面会で、「交渉は通常、長官級で合意できる内容を把握した後、難しい争点を大統領に持ち込むものだ」「手続きを飛ばそうとする試みは、通商上良い考えではないと思う」と語り、専門家の立場から慎重な交渉プロセスを推奨する見解を示しました。
結論
日米関税交渉の妥結は、トランプ政権下の米国が同盟国に対しても強硬な貿易政策を貫く姿勢を改めて浮き彫りにしました。フィリピンや日本の事例は、米国との貿易交渉がいかに厳しく、時に「屈辱的」な結果を伴いうるかを示しています。自動車、コメ、エネルギーといった核心的な分野で難題を抱える韓国は、日本の交渉結果を綿密に分析し、国内の政治的・経済的影響を最小限に抑えつつ、国益を守るための緻密な戦略を練る必要があります。長官級での実務交渉を積み重ね、大統領会談のタイミングと議題を慎重に見極めることが、今後の韓国の貿易交渉成功の鍵となるでしょう。