資産運用の重要性が叫ばれる現代において、とりあえず投資を始めてみたという方も少なくないでしょう。しかし、自分が何を目指すのかによって、最適な投資手法は大きく異なります。株式投資で資産2億円を築き上げた人気ブロガーが、「老後2000万円問題」を題材にしながら、理想の人生を実現するための投資のコツを解説します。
老後資金や資産運用を象徴する硬貨と札束のイメージ
投資成功の鍵は「目的」にあり:FIREか老後資金か
皆さんが投資を行う目的は何でしょうか?「え、投資の目的?お金を増やしたいだけだけど……」と感じる方も多いかもしれません。しかし、実はこの投資の目的を明確な言葉で表現することが、投資の成否を分けるほど非常に重要なのです。
筆者は20代の頃、「できるだけ早く経済的な自由を得ること」(いわゆるFIRE)を目指して投資を始めました。とにかく早期に仕事を辞めても一生涯困らないだけのお金が欲しかったため、転職や資格手当の取得を通じて短期間で収入を増やし、支出を極限まで抑えて貯蓄を増やしました。さらに、節約と節税にも努めながら、貯蓄の大半を“利回りは高いものの、元本を失う可能性が高い金融商品”に積極的に投資したのです。目的が「できるだけ早く経済的な自由を得ること」でしたから、その実現のためにできることはすべて実行しました。
では、例えば現在40代の方が「漠然と老後が心配だから」という理由で投資を始めた場合、筆者と同じ行動を取るべきでしょうか。40代ともなると、収入を劇的に増やす方法は限られ、家族がいれば支出削減にも限界があります。貯蓄が簡単には増えないかもしれない、元本が減ってしまうのは怖いから少額から投資を始めよう、と20代の筆者とはまったく異なる行動を取る可能性が高いはずです。「老後が不安だから」「子どもの学費を賄いたい」「早期リタイアを目指したい」など、投資をする目的は人によって多種多様です。さらには、年齢、家族構成、収支の状況によって、どのような投資が適切かは大きく異なります。
繰り返しますが、自身の投資目的を自分で理解していることは極めて重要です。じっくり型の人は、全貯蓄を新興国の株式に投資するようなことをすべきではありません。逆に、せっかち型の人は、日本国債のような低リスク低リターンの投資には向かないでしょう。ご自身の投資目的が何かを常に意識することが、成功への第一歩となります。
「老後2000万円問題」が示す本当の意味とは
ところで、皆さんは「老後2000万円問題」を覚えているでしょうか?2019年6月に金融庁が公表した報告書『高齢社会における資産形成・管理』には、老後の収支を計算すると2000万円の不足額が生じるという記載があり、これが国会で野党によって追及され、各種メディアも取り上げて大炎上しました。
この件がきっかけで老後の生活に不安を覚え、投資に興味を持ったり、実際に投資を始めた人は非常に多いと思います。事実、2019年頃から投資用口座を開設する人が激増しました。
しかし一方で、金融庁の報告書を実際に読んだことがある人はほとんどいないのではないでしょうか。あれほど大騒ぎになりましたが、本当に老後のために2000万円が必要なのか、その背景や文脈まで気にした人は少なかったかもしれません。この報告書の中で、2000万円の不足額に関連する内容の真意を理解することは、自身の投資目的を考える上で非常に示唆に富んでいます。この問題が提起したのは、単に「2000万円が必要」という数字だけではなく、個々人が将来設計を見据え、自らの手で資産形成に取り組むことの重要性だったのです。
結論
投資を始める際、具体的な目標設定は不可欠です。漠然と「お金を増やしたい」と考えるのではなく、「いつまでに、いくら、何のために」という明確な目的を持つことが、適切な投資戦略を立て、成功へと導く鍵となります。「老後2000万円問題」が提起した本質は、単なる金額の不足ではなく、一人ひとりが自身のライフプランを見つめ直し、それに見合った資産形成を主体的に行うことの必要性でした。自身の年齢、家族構成、収支状況、そして何よりも自身の性格に合った投資目的を明確にし、それに基づいて行動することで、理想の未来を実現する道が開かれるでしょう。
参考文献
- 斗比主閲子『ふつうの会社員が投資の勉強をしてみたら資産が2億円になった話』(幻冬舎)
- 金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書『高齢社会における資産形成・管理』(2019年6月3日)