『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』(以下『無限城編』)が、日本全国で圧倒的な興行成績を記録し、その快進撃が止まりません。公開初日からわずか3日間で興行収入55億円、祝日を含む4日間では73億円を突破。これは、日本歴代興行収入第1位を誇る前作『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』のペースをも上回る驚異的な数字です。なぜ本作はこれほどまでに多くの観客を魅了し、成功を収めているのでしょうか。その「神髄」に迫ります。
劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来のキービジュアル。鬼殺隊と猗窩座の壮絶な戦いを予感させるメインポスター。
原作に忠実なストーリー展開
本作で描かれるのは、鬼舞辻無惨の根城である「無限城」へ送り込まれた主人公・竈門炭治郎をはじめとする鬼殺隊と、強大な鬼たちとの激しい死闘です。吾峠呼世晴氏による原作漫画では、物語全体のクライマックス三部作の序章にあたる重要なエピソードが映画化されました。
ストーリーは驚くほど原作に忠実であり、セリフの一つ一つに至るまで完全に再現されています。原作を読んでいるファンであれば、次に何が起こるか手に取るようにわかるでしょう。それでもこれほど多くの人々が劇場に足を運ぶのは、原作が持つストーリー自体の魅力と、それを最大限に引き出すufotableの高いアニメーション品質、この二点が融合しているからに他なりません。
鬼殺隊士が剣を構え、鬼と対峙する場面。原作に忠実なアニメーションの迫力を示す。
圧倒的なダイナミズムを誇る戦闘シーン
まず観客を圧倒するのは、そのダイナミックな戦闘シーンです。原作では簡略化されがちだったアクションも、アニメでは登場人物の激しい動きや目まぐるしいスピード感あふれる移動、「呼吸」の技、そして剣術の鮮烈なビジュアルが余すことなく描き込まれています。
パンフレットの解説によると、猗窩座が繰り出す奥義「青銀乱残光」のシーンでは、高速の乱れ打ちの技を表現するため、約1分間に5,000枚以上もの作画が行われたとされています。これにより、めまぐるしく動き回るカメラワークと重厚な音響・劇伴と相まって、極めて高品質かつ迫力満点の戦闘シーンが完成し、観客を画面に釘付けにします。
高速で繰り広げられる鬼と鬼殺隊の戦闘。ufotableによるダイナミックなアクション描写。
高密度で奥行きのある無限城の美術
物語の主要な舞台となる無限城のビジュアルもまた、圧巻の一言に尽きます。どこまでも広がり、内部の空間や構造が常に生き物のように変化し続ける無限城の様子は、ufotableの最新3DCG技術を駆使して見事に再現されました。
当初、ufotable社内での試算では、無限城のレンダリング(描画)には3年6ヶ月もの膨大な時間がかかると算定されていたといいます。しかし、そこからさらに最新の設備やリソースを投入し、人力での改善を重ね続けた結果、レンダリングにかかる時間は大幅に短縮されました。これにより、どこまでも広く、緻密で、圧倒的な奥行きを持つ無限城の中をキャラクターたちが縦横無尽に駆け回り、激しい戦いを繰り広げる映像が実現しました。この没入感の高い映像体験は、ぜひ劇場で体感することをお勧めします。
無限に広がる複雑な構造を持つ無限城の内部。3DCGによって再現された圧倒的な奥行きと密度。
まとめ
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の驚異的な成功は、吾峠呼世晴氏の原作が持つ不朽の魅力と、それをアニメーションとして最高品質で具現化したufotableの卓越した技術力の結晶と言えるでしょう。原作への忠実な描写、息をのむようなダイナミックな戦闘シーン、そして高密度で奥行きのある無限城の美術は、観客を深く物語の世界へと引き込みます。これら全てが融合し、前作を超えるペースでの興行収入を達成しているのです。この稀有な劇場体験を、ぜひ大スクリーンでお楽しみください。