静岡県伊東市を揺るがす田久保真紀市長の学歴詐称疑惑は、新たな展開を見せ泥沼化の様相を呈しています。市長就任直後の6月に発行された市の広報誌に「平成4年東洋大学法学部卒業」と記載されていたことから、市議会が学歴を偽った疑いを指摘。その後、東洋大学が田久保氏が大学から除籍されていたことを公表し、疑惑は深まりました。市長は当初、「大学卒業の経歴は選挙中に自ら公表していないため公職選挙法上の問題はない」とコメントしていましたが、市議会は厳しく追及。特に百条委員会の設置により、この問題は伊東市政にとって避けて通れない大きな課題となっています。
「東洋大学卒業」記載巡る疑惑の始まり
伊東市の広報誌に「平成4年東洋大学法学部卒業」と記載されたことを発端に、田久保真紀市長の学歴に関する疑惑が浮上しました。この記載に対し、市議会が学歴詐称の疑いを指摘。これを受けて、東洋大学側が田久保氏が実際に大学を卒業しておらず、過去に除籍処分となっていたことを明らかにしました。この事実が判明した後も、田久保市長は自身の経歴について「選挙中に自ら公表したものではない」とし、公職選挙法に抵触する問題はないとの見解を表明していました。しかし、この説明は市民や市議会の納得を得られるものではありませんでした。
市議会の追及と百条委員会設置の経緯
学歴疑惑の報を受け、伊東市議会の中島弘道議長は、以前に田久保市長から「卒業証書とされる書類」を“チラ見せ”されたことがあり、それが偽物であると確信したと主張しました。議長は「伊東市全体を混乱させた」として、市長に対し厳しく責任を追及する姿勢を示しました。こうした議会の強い要求に応じる形で、事実関係を徹底的に調査するための「百条委員会」が設置されました。委員会は、疑惑の中心である“卒業証書”とされる資料を7月18日16時までに提出するよう市長に正式に求め、この期限を過ぎて約18時間後に、田久保市長がNEWSポストセブンの記者に自身の“言い分”を語ることとなります。
期限切れ後の「拒否」と田久保市長の主張
百条委員会が定めた提出期限の約15分前、田久保市長は中島議長らと面会しましたが、彼女が提出したのは求められた“証書”ではなく、「記録提出請求に対する回答書」と題された書面でした。この回答書には「証書とされている書類につきましては、その提出を拒否します」と明確に記されていました。提出拒否の理由として市長が挙げたのは、7月7日に市内の建設会社社長から公職選挙法違反の疑いで刑事告訴されたことでした。市長は、当該資料が訴追の可能性がある自身の「重要な証拠」となるため、弁護士が保管しており提出できないと釈明しました。
大手紙政治部記者は、百条委員会には強力な権限があり、正当な理由なく資料提出を拒否した場合は6か月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金が科される可能性があると指摘します。しかし、田久保市長は記者会見で「検察と百条委員会、両方に提出すればいいのでは」との質問に対し、「事態が変わり、弁護士が重要な証拠として保管している」と弁明するに留まりました。
7月7日の緊急会見で、田久保市長は「(私が議長や市の職員に見せた)卒業証書はいまでも本物だと思っています」と断言していました。この発言に対し、SNS上では「本物なら見せたらいい」「ネットに証書をあげれば一発」といった疑問の声が多数上がっていますが、百条委員会の要請をもってしても、市長が“証書”を公に示す意思はないようです。回答書では弁護士の「供述拒否権」や「押収拒絶権」といった法律用語が並べられ、自身の同意なく資料が外部に出されることはないとの牽制も行われています。
疑惑深まる背景と市長の動向
田久保市長は18日の記者会見で「百条委員会をないがしろにするつもりはない」とも語っていますが、その行動は議会の追及をかわすような形となっています。一連の学歴詐称疑惑の責任を取り、すでに辞意を表明しているにもかかわらず、市議会の追及は止まる気配がありません。
泥沼化する学歴詐称疑惑ですが、市長本人は取り立てて動揺する様子を見せていません。19日午前にNEWSポストセブンの記者が自宅を訪れた際も、およそ1時間にわたり淡々と取材に応じ、自身の見解を語り続けました。この問題は、公職者の透明性と説明責任、そして法的権利との間で複雑に絡み合い、解決の糸口が見えない状況が続いています。