シルバニアファミリー、TikTok人気「Sylvanian Drama」を著作権侵害で提訴:法廷闘争の背景と焦点

世界中で愛される玩具「シルバニアファミリー」の製造元、日本のエポック社が、TikTokで人気を博す「Sylvanian Drama(シルバニア・ドラマ)」を著作権侵害提訴しました。フォロワー250万人を擁するこのアカウントは、可愛らしい動物人形たちが大人向けの昼ドラ風スキャンダルを演じることで話題に。本訴訟は、知的財産権と表現の自由の境界を巡る、世界的に注目されるケースです。

物議を醸す「Sylvanian Drama」とは

「Sylvanian Drama」は、アイルランドのコンテンツクリエイター、Thea Von Engelbrechtenさん(当時19歳、大学生)が2021年に開始したTikTokアカウントです。愛らしいシルバニアファミリーの人形に衣装やつけまつげを施し、アルコール、薬物、浮気、暴力、殺人といった“昼ドラ”さながらのスキャンダラスな寸劇を制作。動画には「働く気ゼロなんだけど」「結婚生活、もう無理」などの現代的な字幕が付され、「ゴシップガール」や「プリティ・リトル・ライアーズ」といった人気ドラマのパロディとして急速に拡散。そのユニークで過激な内容がTikTok上で大きな反響を呼び、現在250万人のフォロワーを獲得しています。

シルバニアファミリーの人形たちがスキャンダラスなシーンを演じる「Sylvanian Drama」の様子。著作権訴訟の中心。シルバニアファミリーの人形たちがスキャンダラスなシーンを演じる「Sylvanian Drama」の様子。著作権訴訟の中心。

エポック社による提訴の詳細

シルバニアファミリー」を展開するエポック社は2024年4月、ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所にEngelbrechtenさんを提訴。訴状では、同社が「Sylvanian Drama」による著作権侵害商標侵害、および不公正競争を主張しています。エポック社は、キャラクターの無断使用により、健全な「シルバニアファミリー」ブランドイメージが回復不能なほど傷つけられたと訴え。また、同アカウントがマーク ジェイコブスやNetflixといった著名企業の広告投稿もしていたことが、商業的利用としての論点とされています。

訴訟の経緯と今後の焦点

エポック社は、訴訟前の2023年10月にDMCA(デジタルミレニアム著作権法)に基づきTikTok側にコンテンツ削除を申し立て、一部動画は削除されました。しかし、根本的な著作権侵害解決には至らず、今回の訴訟提起が「他に選択肢はなかった」と説明しています。Engelbrechtenさん側は、動画はあくまでパロディであり、フェアユースに該当すると反論。エポック社は、キャラクター使用の差し止め命令に加え、侵害された著作物1点につき最大15万ドル(約2,300万円)の損害賠償を求めています。この法廷闘争の予備審問は2024年8月14日に予定されており、知的財産権と表現の自由の境界を巡る重要な判例となる可能性を秘めています。

参考文献

  • NBC News
  • BBC