報道特集と参政党、激化する「報道偏向」と「メディア排除」の対立の行方

TBS系報道番組『報道特集』が、参院選を控える時期に「外国人政策」に関する特集を放送したことで、参政党との間で「偏向報道」を巡る激しい対立が勃発しています。番組が掲げた「日本人ファースト」というスローガンへの指摘に対し、参政党はTBSに厳重抗議。さらに、同番組が改めて参政党の「メディア排除」をテーマにした特集を告知し、論争は新たな局面を迎えています。

「日本人ファースト」巡る報道と波紋

事の発端は、7月12日に『報道特集』が放送した「争点に急浮上 “外国人政策”に不安の声」と題する特集でした。この中で、躍進する参政党が掲げる「日本人ファースト」について深掘り。番組は「参政党は“外国人が優遇されている”と訴え、犯罪や生活保護について強硬な主張を繰り返す」と指摘し、大阪公立大学准教授へのインタビューでは、「日本人ファースト」という言葉が差別を扇動する効果を持つ可能性が示唆されました。

特集の終盤には、メインキャスターの山本恵里伽アナウンサーが、「社会が決して受け入れてこなかった、排外的な、差別的な言葉がSNSで拡散していく。そういった現実に、正直すごく戸惑いを感じています」と自身の見解を表明。この提言は一部で「勇気ある発言」と賛同される一方で、「偏向的」「日本人ファーストの何が悪い」といった批判も噴出し、大きな波紋を呼びました。

参政党の抗議とTBSの反論

山本アナの発言を受け、参政党は翌13日に公式ホームページで、《選挙報道として著しく公平性・中立性を欠く内容が放送された》として、TBSに対し厳重な抗議と訂正を求める申入書を提出したと発表しました。党は番組の構成や表現、登場人物の選定などが放送倫理に反すると主張し、「偏向報道」であると非難しました。

これに対し、TBSは《今回の特集は、参政党が⽀持を伸ばす中、各党も次々と外国⼈を対象とした政策や公約を打ち出し、参院選の争点に急浮上していることを踏まえ、排外主義の⾼まりへの懸念が強まっていることを、客観的な統計も⽰しながら、様々な当事者や⼈権問題に取り組む団体や専⾨家などの声を中⼼に問題提起したものです》と回答。さらに、《この報道には、有権者に判断材料を⽰すという⾼い公共性、公益性があると考えております》と、報道の公共性を強調し、自らの立場を正当化しました。

しかし、参政党はこのTBSの回答に納得せず、14日には再びホームページ上で、《「公益性・公共性のある報道である」として、構成の公正性や取材姿勢の偏りといった本質的な問題点には一切触れない回答が寄せられました》と批判。これを受けて、事態は「BPO放送人権委員会の申立要件にあたる『相容れない状況』が生じた」と判断し、正式にBPOへの申立てを行うことを決定しました。

神奈川新聞記者への「出席拒否」問題

この報道と抗議の応酬が続く中で、『報道特集』は7月26日の放送で再び参政党を特集することを告知しました。今回のテーマは「参政党の“メディア排除”を問う」というもので、特に注目を集めたのが、22日の参政党定例会見で出席を拒否された「神奈川新聞」記者の登場です。

TBS『報道特集』のX公式アカウントによる、参政党の「メディア排除」特集告知と、取材を受ける神奈川新聞記者の様子。TBS『報道特集』のX公式アカウントによる、参政党の「メディア排除」特集告知と、取材を受ける神奈川新聞記者の様子。

この会見で神奈川新聞記者は「事前申請がない」ことを理由に会場への出席を認められませんでした。しかしその後、会見の出席条件に事前申請の記載がなかったことが判明。朝日新聞の取材に対し、参政党は当初、拒否理由について「内部で検討したい」と回答を保留しましたが、24日になって公式ホームページで、《本党の街頭演説で大声による誹謗中傷などの妨害行為に関与していた》ため、《混乱が生じるおそれがあると判断》したと説明しました。

激化する「報道機関vs参政党」の攻防

批判的なメディアに対し徹底抗戦の構えを見せる参政党と、一歩も引かないTBS。この両者の対立は、メディアの報道姿勢と政治活動における情報公開のあり方を巡る、新たな局面へと突入しています。

TBSが抗議を受けながらも再び参政党を特集することに対し、SNS上では「地上波を使ってまだ偏向報道続けるのか。マジでいい加減にしろ」といった批判的な声が上がる一方で、「徹底的に追求して欲しい」「批判に耳を貸さず、自らの主張だけを通そうとする【参政党】の姿勢に、『強い不信感』を抱きます。権力を恐れず伝える報道に敬意を表します」と、TBSの報道姿勢を支持する声も多数寄せられています。

メディアの「公平性」「中立性」が問われる現代において、このTBSと参政党の攻防がどのような結末を迎えるのか、今後の動向が注目されます。