台湾当局の林佳竜外交部長が異例の訪日を果たし、日本の国会議員らと意見交換を行ったことに対し、中国外務省は日本側へ強く抗議したと発表しました。この動きは、中国が「一つの中国」原則に関わる台湾問題を「核心的利益」の中心と位置づけていることの表れであり、日中関係における新たな緊張の兆候と見られています。
台湾外交トップの異例の訪日と交流
台湾の現役外交部長である林佳竜氏は今週、日本を訪問しました。これは、台湾の外交トップが公に訪日することが異例とされる中で注目を集めました。林氏は都内で、超党派の議員連盟である「日華議員懇談会」の会長を務める古屋圭司衆院議員や、自民党の高市早苗議員ら日本の要人との間で意見交換を行いました。台湾外交部はこの訪問について「私的なもの」と説明しています。しかし、その肩書から政治的な意味合いが強く、中国側の反発を招くこととなりました。
中国外務省の強硬な抗議と「核心的利益」の強調
中国外務省は、林佳竜外交部長の訪日を受け、日本政府に対し厳重な抗議を行いました。中国外務省の劉勁松アジア局長は25日、北京の日本大使館の横地晃次席公使に対し、電話会談にて中国側の立場を強調しました。劉局長は、台湾問題が「中国の核心的利益中の核心」であると述べ、日本側が林氏の「私的な身分」での訪問を容認したことは、「反中分裂活動に舞台を提供し、極めて誤ったシグナルを発するものだ」と強く非難しました。この発言は、中国が台湾の外交活動を自国の主権に関わる重大な問題と捉えていることを明確に示しています。
歴史的背景と日本への要求
さらに中国外務省は、歴史的背景に言及し、日本に対し強い要求を突きつけました。「今年は抗日戦争勝利80周年であり、台湾の光復(回復)80周年にあたる」と指摘し、日本が過去に交わした「これまでの政治文書と台湾問題に対する厳粛な約束を守り、今回の事態による悪影響を直ちに取り除く措置をとるよう」求めました。これは、日中国交正常化以降の共通認識を再確認させるとともに、台湾の地位に関する日本の姿勢に釘を刺す意図があると見られます。歴史的な記念日を絡めることで、中国側の主張に一層の正当性を与えようとする狙いも透けて見えます。
日本政府の立場と今後の展望
これに対し、北京の日本大使館によれば、横地晃次席公使は電話会談において、日本政府の台湾に関するこれまでの立場を説明しました。日本政府は「一つの中国」原則を理解し尊重しつつも、台湾との非政府間の実務関係を維持・発展させるという立場を取っています。今回の中国の強い抗議は、台湾海峡情勢の緊迫化と国際社会における台湾の地位向上への動きが交錯する中で、日中関係のデリケートなバランスを改めて浮き彫りにする出来事となりました。今後も、中国が台湾に関連する日本の動きに対して厳しく目を光らせていくことは必至であり、日本政府は慎重な外交対応が求められます。
ソース:
- All Nippon NewsNetwork(ANN)
- テレビ朝日
- Yahoo!ニュース: https://news.yahoo.co.jp/articles/6be2af8265c74b8046bdbf995bd7c6e52a369332