ベストセラー『食品の裏側――みんな大好きな食品添加物』の著者であり、食品安全の専門家である安部司氏が、料理家のタカコナカムラ氏と共著した新刊『日本人なら必ず食べたい安部おやつ』を上梓しました。砂糖や油、そして食品添加物が大量に使われる市販のお菓子に不安を感じる消費者に向けて、「無添加×安心×美味しい」をコンセプトに、112もの健康おやつを提案しています。安部氏の著書は、今年度の「第12回料理レシピ本大賞」において、『食品の裏側』が料理部門、『安部おやつ』が菓子部門のそれぞれ最終候補作品に選出され、その権威と内容の信頼性が高く評価されています。本記事では、長年にわたり食の安全を追求し続ける安部氏が、現代の加工食品に欠かせない「加工デンプン」について深く掘り下げ、その実態と隠された背景を解説します。
加工デンプンとは何か?その驚くべき万能性
「加工デンプン」とは、トウモロコシなどの天然デンプンに化学的あるいは物理的な処理を加えることで、食品加工において特定の機能を発揮するように改良された食品添加物です。粘度を調整したり、食品を乳化させたり、製品の安定性を高めたり、冷凍・解凍時の品質劣化を防ぐ耐性を持たせたりと、その用途は多岐にわたります。まさに「万能の働き」をすると言えるこの特性が、現代の食品製造において不可欠な存在となっています。特に、調理済み食品や保存食の品質維持には、このデンプン加工技術が大きく貢献しています。
食卓への浸透:2008年以降の急速な普及
安部氏が2005年に『食品の裏側』を執筆した当時、加工デンプンの使用は今ほど一般的ではありませんでした。しかし、2008年10月1日に食品添加物として新たに指定され、既存の1品と合わせて合計12品目の加工デンプンが使用可能となったことで状況は一変しました。この指定を境に、加工デンプンはその使用範囲を急速に拡大。現在ではパン、スナック菓子、米菓、アイスクリーム、レトルト食品、冷凍食品、さらには麺類に至るまで、極めて多種多様な加工食品に幅広く利用されるようになっています。
食品添加物である加工デンプンが含まれる加工食品のイメージ。ファストフードにおけるデンプン利用の実態を示唆。
具体例で見る加工デンプンの役割
加工デンプンが食品にもたらす具体的な効果は、私たちの日常で口にする食品の品質に大きく関わっています。例えば、菓子パンでは生地の安定性を高め、ふんわりとした食感や口どけの良さを実現します。レトルトカレーでは、加熱後もとろみを維持し、品質が損なわれにくい特性を発揮します。また、食肉加工の分野では、肉から出る水分(ドリップ)を防ぎ、食感を改善する役割も担っています。これらの機能は、加工食品の利便性と美味しさを維持するために不可欠であり、現代の食品産業を支える重要な要素の一つと言えるでしょう。
まとめ
加工デンプンは、その「万能性」により、現代の食品加工において欠かせない存在となっています。しかし、その急速な普及と多様な用途は、消費者が知らないうちに多くの加工デンプンを摂取している現実を浮き彫りにします。安部司氏が長年警鐘を鳴らし続けているように、見えにくい食品添加物の実態を知り、安全で安心な食生活を送るためには、私たち自身の食に対する意識と知識がこれまで以上に重要です。安部氏の提唱する「無添加」「健康」なおやつや食事は、加工デンプンをはじめとする添加物との向き合い方を考える上で、貴重な指針となるでしょう。
参考資料
- Yahoo!ニュース: 加工デンプン「魔法の粉」の裏側 食品安全の専門家が語る驚きの実態
- 安部司 著『食品の裏側――みんな大好きな食品添加物』
- 安部司・タカコナカムラ 共著『日本人なら必ず食べたい安部おやつ』