今、これ以上ないほど株を売るべき時が訪れています。現在の株価上昇は、ドナルド・トランプ米大統領の仕掛ける「妖術」に世界が囚われているからに他なりません。同時に、多くの人々が、進行する日本政治の崩壊から社会全体の破綻を漫然と見過ごしています。しかし、この幻想は長くは続きません。やがて人々が「噂で買い、事実で売る」という市場の原則に気づき、世界経済と日本社会が直面する真の危機を認識した時、歴史的な大暴落が避けられないでしょう。株式市場も、そして社会そのものも、終焉に向かっているのかもしれません。
一時的に姿を消した「恐怖と混乱のシナリオ」
日本時間の7月23日早朝、アメリカのドナルド・トランプ大統領と日本の赤澤亮正経済再生担当大臣との間で交渉がまとまり、日本への相互関税が15%、自動車関連も15%で合意に達しました。これにより、一見するとトランプ大統領との関税戦争に決着がついたかのような印象を与えました。
この報道を受け、日本の株式市場は熱狂的な反応を示し、同日の日経平均株価は前日比1396円もの大幅な上昇を記録し取引を終えました。さらに翌24日も655円の上昇が続き、市場の興奮は冷めやらない様子でした。日本に続き、アメリカとEUの交渉も終結へ向かう見込みであること、さらには米中間の貿易協議も予定されており、こちらも合意に至る可能性への期待が膨らんだことで、世界中の株式市場が軒並み上昇する全面高の展開となりました。
日本国内の政治状況も、市場に一時的な安堵感をもたらしました。最悪のシナリオが懸念されていた状況から見れば、一時的な安定感が得られたことが、株価の大幅な上昇を後押しする材料となったのです。具体的には、「石破政権が選挙で敗北し政権を投げ出し、減税を主張する野党が政権を掌握して大減税を実現する。しかし、結局は資金をばら撒くこと(あるいは、徴税という面倒で嫌われる仕事を放棄すること)以外何もできない政権となり、結果として社会も経済も崩壊する」という恐怖のシナリオが、選挙結果の開票直前には現実味を帯びていました。
ところが、最終的な投票結果を見てみると、自民党は当初の最悪の想定よりは多少ましな結果に落ち着きました。また、自民党政権内部で新しい首相が選出される際に混乱が生じると予測されていましたが、石破氏はその真意がどうであれ、辞任しないと宣言したことで、少なくとも8月か9月に衆議院が開会されるまでは、政治的な大混乱が一時的に先送りされるかもしれないという、かりそめの希望が生まれたのです。
トランプ大統領とパウエルFRB議長、経済政策への影響を巡る米国の動き
日本にとって、起きたことは悪いことばかり
これら二つの要素、すなわち表面的な貿易交渉の進展と、日本の政治状況における一時的な安定感が相まって、日本株は今回、世界の他の株式市場をはるかに上回る急騰を見せました。しかし、これは「そんな馬鹿な」としか言いようのない状況です。
実際には、合意された関税率や一時的な政治的安定は、根本的な経済的・社会的問題を解決するものではありません。トランプ大統領の政策は、短期的な市場の反応を引き出す一方で、貿易の不確実性や保護主義の長期的な影響は、世界経済に深い傷跡を残す可能性があります。また、日本政治の一時的な安定も、構造的な問題や将来の不透明性を解消したわけではなく、単に問題の先送りに過ぎません。これらの「好材料」は、本質的な脆弱性を覆い隠す薄いベールに過ぎず、投資家が「事実」に目覚めた時、その反動は計り知れないものとなるでしょう。
結論:偽りの安定がもたらす大暴落の危険性
現在の株式市場の活況は、一時的な外交的進展と政治的な安堵感によって生み出された幻想に過ぎません。ドナルド・トランプ大統領の動きが市場を一時的に活性化させている一方で、日本社会の根底では、政治の機能不全と経済的構造問題による崩壊が静かに進行しています。この「噂」による上昇相場は、やがて「事実」としての世界経済の脆弱性と日本社会の危機が明らかになった時、投資家を深淵へと突き落とす大暴落へと繋がるでしょう。今こそ、冷静に状況を見極め、市場の過熱に流されることなく、リスク管理を徹底する時です。