2024年7月、アメリカ軍は最新鋭の兵器システムを相次いで日本へ展開しました。これらの動きは、進化する地域情勢と、特に中国および北朝鮮からの潜在的な脅威に対するアメリカの戦略的な意図を明確に示しています。単なる兵器の配備に留まらず、その背後には「見せる抑止」という強力なメッセージと、日本の安全保障を巡る新たな防衛強化の動きが見て取れます。
ステルス駆逐艦「マイケル・モンスーア」横須賀寄港の真意:中国の海洋進出への牽制
7月7日、アメリカ海軍横須賀基地に、独特の白い船体を持つステルス駆逐艦「マイケル・モンスーア」が初めて寄港しました。このズムウォルト級駆逐艦は、その表面の突起が極めて少ない設計により、レーダーに捕捉されにくい特性を持っています。なぜこのタイミングでの寄港となったのでしょうか。
横須賀基地に寄港するアメリカ海軍の最新鋭ステルス駆逐艦「マイケル・モンスーア」。中国の海洋進出を牽制する「見せる抑止」の象徴。
フジテレビの能勢伸之特別解説委員は、その理由を「見せる抑止」による牽制だと指摘します。6月には、中国の空母「遼寧」と「山東」の2隻が、小笠原諸島やグアムを結ぶ「第2列島線」を初めて越えて太平洋に進出しました。「マイケル・モンスーア」のようなステルス艦は、中国のさらなる海洋進出に対し、その影のように寄り添い行動していた可能性も考えられます。本艦は、射程1600kmの巡航ミサイル「トマホーク」を最大80発連射する能力を持ち、将来的には極超音速ミサイルCPSの搭載も計画されています。2025年12月には同型艦からの試験発射が予定されており、その高い攻撃能力と隠密性が、地域の戦略バランスに大きな影響を与えることが予想されます。
嘉手納基地へF-15EXと長期展開するコブラボール:北朝鮮の動向への警戒
海上での動きに加え、アメリカ空軍も活発な展開を見せています。7月12日には、最新鋭のF-15EX戦闘攻撃機が嘉手納基地に到着しました。このF-15EXは、2027年度からの配備を目指す極超音速巡航ミサイルHACMを搭載する予定です。HACMは射程1800km、速度はマッハ8以上を誇り、海軍のCPSよりも低く、速く飛行するため、レーダーでの捕捉がさらに困難となり、敵の迎撃を一層難しくします。
嘉手納基地に到着した米空軍のF-15EX戦闘攻撃機。極超音速ミサイルHACMの搭載も視野に入れ、地域防衛力を強化。
極超音速ミサイルの配備に向けた動きが相次ぐ中、嘉手納基地には、5月から「右主翼だけが真っ黒」という特徴を持つ偵察機「コブラボール」が長期展開しています。
嘉手納基地に長期展開する米空軍の偵察機「コブラボール」。北朝鮮の弾道ミサイルや衛星打ち上げロケットの動向を監視。
コブラボールは飛行中に他国が試験発射した弾道ミサイルや衛星打ち上げロケットの軌道を追跡し、その性能を詳細に分析する能力を有しています。能勢解説委員によると、ロシアに接近する北朝鮮は、西海衛星発射場で新たな大型施設の建設を進めており、これまでのものよりも大型の偵察衛星用ロケットの打ち上げが可能になると見られています。アメリカ軍がわずか3機しか保有していないコブラボールの長期展開は異例であり、日本周辺の脅威、特に北朝鮮のミサイル・衛星開発に対するアメリカの高い警戒心の表れであると言えるでしょう。
まとめ
アメリカが日本に最新鋭の兵器を相次いで展開するこれらの動きは、単なる軍事演習に留まらない、より広範な戦略的メッセージを含んでいます。ステルス駆逐艦「マイケル・モンスーア」の寄港は、中国の海洋進出に対する「見せる抑止」の明確な表明であり、F-15EXとコブラボールの嘉手納基地への展開は、北朝鮮の弾道ミサイルや衛星開発といった具体的な脅威への直接的な警戒と監視を意味します。これらの複合的な動きは、日米同盟の強化と、インド太平洋地域における安定と安全保障を維持するというアメリカの揺るぎないコミットメントを示していると言えるでしょう。地域における安全保障環境が複雑化する中で、これらの戦略的な展開は、今後の国際情勢を占う上で極めて重要な要素となります。
参考文献:
- FNNプライムオンライン: 「米国が最新鋭兵器を日本に相次ぎ展開した“ワケ”を独自取材 極超音速ミサイル&偵察機」 (2024年7月27日放送『イット!』より)
- https://news.yahoo.co.jp/articles/ef13704b03afcf049cd67d5af31192dde56af17b