参院選で「男系維持」派議員が相次ぎ落選:皇室典範議論の行方と保守票の変動

先日行われた参議院選挙では、自民党内で「男系維持」を強く主張してきた議員たちの落選が目立ちました。当選した自民党議員の中には、「女性天皇容認」を明確に表明する者も少なくなく、皇位継承問題に関する世論に地殻変動が起きているかのように見えます。しかし、党内の男系派の影響力は依然として強く、「女性天皇容認派」が具体的な行動に移すには依然として限界があるのが現状です。

「男系維持」派議員の相次ぐ落選とその背景

今回の参院選では、これまで男系維持を訴えてきた主要な議員が苦戦を強いられました。特に注目されたのは、元参議院議員である赤池誠章氏と、同じく参議院議員の和田政宗氏の動向です。

赤池誠章氏の失速と「皇室典範改正」への関与

赤池誠章氏は、2005年の郵政選挙で衆議院に初当選後、参議院議員に転身しました。彼のブログには、「皇室典範改正問題に取り組みました。直系最優先(女性天皇、女系天皇容認)の皇室典範改正議論があり、同志とともに慎重論を訴えました」と記されており、一貫して男系維持の立場を取っていたことが伺えます。また、同期の稲田朋美氏と共に「伝統と創造の会」を発足させ、「日本会議」国会議員懇談会の事務局次長を務めるなど、保守派の重鎮としての影響力を持っていました。しかし、今回の選挙では、前回比で約3万票減の10万2834票にとどまり、自民党内の特定枠順位で17位となり、当選ライン(12位まで)に届かず落選しました。
参院選での皇室典範議論と保守票の動向を報じる週刊誌「サンデー毎日」2025年8月10日号の表紙参院選での皇室典範議論と保守票の動向を報じる週刊誌「サンデー毎日」2025年8月10日号の表紙

和田政宗氏のまさかの惨敗

NHKアナウンサー出身の和田政宗氏は、2013年の参院選で初当選後、自民党に移籍しました。彼は今年5月15日に『読売新聞』が女性天皇容認の記事を掲載した際、自身のSNSに「男系による皇統の継承を揺るがせては絶対にならず、女性宮家の創設や女系天皇はあり得ず……」と投稿するなど、男系継承の強い擁護者として知られています。前回参院選で「日本会議」推薦候補であった衛藤晟一氏(比例)が引退したため、和田氏はその後継推薦候補として出馬しました。しかし、今回得た票はわずか6万4665票で、自民党内24位と当選ラインには遠く及びませんでした。2019年選挙で約29万票(自民党内5位)を得ていたことを考えると、今回の結果はまさに惨敗と言えるでしょう。

「日本会議」票の動向と保守層の変化

一方で、「日本会議」推薦候補の一人である有村治子氏は、今回16万6025票を獲得し、自民党内で9位を確保して当選を果たしました。しかし、前回比では約4万票減となっており、彼女自身も選挙期間中、当落線上にあることを強くアピールしていました。和田氏と有村氏の二人しか「日本会議」推薦候補がいなかった中で、最後に有村氏へ票が戦略的に集められたという見方もあります。

これらの結果は、皇位継承問題における「男系維持」という伝統的な保守思想への支持が、必ずしも盤石ではないことを示唆しています。これまで自民党の主要な支持基盤であった保守票の一部が、参政党などの他の保守系政党へ流れる傾向も見られ、日本の政治における保守層の多様化と流動性が浮き彫りになっています。

結論

今回の参議院選挙の結果は、皇室典範改正や皇位継承問題に関する国民の意識が静かに変化しつつある可能性を示しています。特に、「男系維持」を強く主張する議員の落選や得票減は、これまでの固定観念が揺らぎつつあることを象徴しています。しかし、自民党内における男系派の影響力は依然として強く、女性天皇容認への道筋は一筋縄ではいかない現状も浮き彫りになりました。今後、皇室の安定的な継承に向けた議論がどのように進展していくのか、引き続き注視が必要です。