近年、訪日外国人観光客の増加に伴い、日本の観光地では混雑や地元住民の生活への影響といったオーバーツーリズムの問題が深刻化しています。こうした状況を受け、訪日客を対象に料金に価格差を設ける「二重価格」の導入が議論の対象となっています。AERA編集部が実施したアンケート調査では、回答者の約8割がこの「二重価格」の導入に賛成しており、観光客への「悪い印象」といった懸念よりも、過度な混雑に対する地元住民の疲弊感が浮き彫りになりました。しかし、誰を対象に価格差を設定するかについては、様々な意見が存在します。
国民の8割が「二重価格」導入に賛成 – AERAアンケート結果
2024年7月9日から16日にかけてAERA編集部が実施した読者アンケート(回答者764人)の結果、「二重価格」設定に「賛成」が62.7%、「やや賛成」が17.7%と、合計80.4%が導入を支持しました。一方で、「反対」は9.4%、「やや反対」と合わせて14.1%にとどまりました。二重価格を設定する対象として多くの票を集めたのは、「自然保護地域」(国立公園や動植物園など)と「文化施設」(博物館、美術館、史跡、寺社など)で、いずれも約8割が選択。テーマパークなどの「娯楽施設」は50.3%、「一般の飲食店」は33.2%、「交通機関」は31.0%でした。
京都市内、清水寺周辺のような混雑する観光地を歩く訪日外国人観光客と日本人。日本のオーバーツーリズム問題と二重価格導入の議論を示す。
観光客増加がもたらす「混雑」と「マナー問題」
アンケートでは、観光地の過度な混雑や訪日外国人観光客のマナーに対する不満が多数寄せられました。多くの回答者が、寺社での大声やゴミの放置、宿泊施設の予約困難と高騰にうんざりし、「旅行を楽しめない」「生活に支障がある」と訴えています。
例えば、40代男性は「日常的に訪れていた文化施設等において、周囲の状況をわきまえずに大声で騒ぎ、写真撮影に走り回る集団と遭遇する機会が増えた。ゴミも所かまわず放置するのもよく見かける。結果、せっかくの落ち着いていた環境が、不愉快な場所と化す」と述べました。また、60代女性からは「どこも混雑が避けられず、落ち着いて観光地や景勝地などを楽しむことが難しくなってきた」「住んでいる場所が都心に近い観光地なので、常に観光客があふれ、静かに暮らしにくくなった」との声も。さらに、50代男性は「せっかく観光地に行ってもマナーの悪い外国人が多く、路上喫煙や静かであるべき場所での大声など、不快な思いをすることが増えた。観光以外でも外国人が少ない場所を選ぶようになった」と、日常生活への影響を指摘しています。
「二重価格」導入への期待と効果
このようなオーバーツーリズム対策の一環として提案されている「二重価格」に対し、導入のメリットとして最も多く挙げられたのは「観光資源などの維持管理にお金を回せる」(82.0%)でした。また、「過剰な数の観光客による混雑、混乱が減る」という点も65.7%が期待しており、収益の確保と混雑緩和への効果が主な導入動機となっていることが伺えます。
まとめ
AERAのアンケート結果から、日本の観光地におけるオーバーツーリズム問題、特に混雑とマナー違反に対する国民の不満が根強く、その解決策として「二重価格」導入への強い支持があることが明らかになりました。この制度は観光資源の持続的な維持管理と混雑緩和に寄与する可能性を秘めていますが、その具体的な適用範囲や対象を巡っては、今後も慎重な議論が求められます。訪日外国人観光客に日本での良好な体験を提供しつつ、地域住民の生活環境を保護するための、バランスの取れた政策が不可欠です。
Source Link: https://news.yahoo.co.jp/articles/934517a94147f8f62bd43d16a1ef03c8d53092e2