先の参議院選挙で自民党が歴史的な敗北を喫し、党内では様々な波紋が広がっている。しかし、有権者が「ノー」を突きつけたのは与党の自民党と公明党だけではない。野党第一党である立憲民主党もまた、極めて厳しい状況に直面している。特にその厳しさを象徴しているのが、比例代表選の得票数である。自民党が1281万票で1位を獲得したのに対し、国民民主党が762万票で2位、参政党が743万票で3位と続き、立憲民主党は740万票でまさかの4位に沈んだのである。この結果は、同党にとって「事実上の敗北」と総括せざるを得ない状況を示している。
議席維持も「事実上の敗北」と総括される理由
立憲民主党は今回の参院選で、改選前と同じ22議席を確保した。共産党のように改選前の7議席から3議席へと激減したような惨敗とは異なるものの、国民民主党や参政党といった新興政党が躍進する中で、立憲民主党の相対的な「凋落」の印象は否めない。読売新聞オンラインの記事によれば、立憲民主党幹部も同紙の取材に対し、「事実上の敗北」と認めたという。
泉健太前代表は、自身のX(旧Twitter)で議席が増えなかったことを「痛恨の極み」と投稿し、敗因を「躍進した他の党と比べ、現役世代の支持で明らかに後塵を拝しました」と分析した。また、野田佳彦代表も「比例選の伸び悩みは厳しく総括しなければならない」と危機感をあらわにしている。この結果は、立憲民主党が単に議席数を維持しただけでは測れない、より根深い課題を抱えていることを示唆している。
参院選での「事実上の敗北」を受け、危機感を表明する立憲民主党の野田佳彦代表
有権者の「既存政党への拒否」と「失われた30年」の影響
政治アナリストの伊藤惇夫氏は、今回の参院選について「かなりの有権者が“既存政党への拒否”を示しました」と指摘する。自民党や公明党だけでなく、立憲民主党や共産党といった長年の既存政党が軒並み議席を減らした一方で、国民民主党と参政党といった新興政党が躍進したことが、その明暗を明確に分けた。
この背景には、日本社会が経験してきた「失われた30年」が大きく影響していると伊藤氏は分析する。この30年間、国民の生活は改善されるどころか悪化の一途を辿ってきた。景気浮揚に無策だった与党に責任があるのは当然だが、野党第一党である立憲民主党もまた、有権者が真に求めるような思い切った政策を提示できなかった。伊藤氏は、「“失われた30年”の問題に関して立憲民主党は自公の“共犯者”だと、有権者は判断したのでしょう。野党としてのチェック機能を果たしてこなかったツケが回ってきたとも言えます」と述べ、有権者の既存政治全体への不信感を浮き彫りにしている。
響かなかったスローガンと有権者の心理
立憲民主党は今回の参院選を「物価高から、あなたを守り抜く」というスローガンで戦った。しかし、このメッセージは多くの有権者に響くものとはならなかった。伊藤氏によれば、政治は結果が全てであり、立憲民主党の選挙戦略にミスがあったからこそ敗北したのだという。その象徴がスローガンだったと指摘する。
対照的に、国民民主党の「手取りを増やす夏」や参政党の「日本人ファースト」は、実のところかなり抽象度の高いメッセージであるにもかかわらず、有権者には「非常に分かりやすく、インパクトがあり、魅力的なキャッチフレーズ」として受け止められた。なぜ、本来ならば説明不足のスローガンが歓迎され、立憲民主党のスローガンは関心を持たれなかったのか。
伊藤氏はこの理由について、「普通の有権者は忙しいのです。各政党の公約をじっくりと比較し、その実現可能性を考える、といった時間はありません」と語る。「手取りが増える」、「日本人優先の政治を行う」といったメッセージにインパクトを感じれば、それだけで充分なのだ。この視点から見ると、立憲民主党の「物価高から守る」というスローガンが、他党のキャッチフレーズに比べてインパクトに乏しかったことは一目瞭然だと言える。
今回の参院選における立憲民主党の「事実上の敗北」は、既存政党に対する有権者の根深い不信感と、メッセージング戦略の失敗が複合的に絡み合った結果と言える。「失われた30年」という長期的な課題に対して、有権者が求める具体的な解決策や、心を掴むビジョンを明確に提示できるかが、今後の立憲民主党にとって喫緊の課題となるだろう。
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