自民党内で石破茂首相(自民党総裁)の進退を巡る議論が激しさを増しており、特に「下野論」がじわりと広がりを見せている。7月28日に開催された自民党両院議員懇談会では、出席議員から石破首相の早期退陣を求める声が相次ぎ、党執行部は早期の両院議員総会開催で党内対立の収拾を図る構えだ。しかし、総会で「石破降ろし」の動きがさらに拡大すれば、8月中にまとめる予定の「参院選敗北の検証結果」を待たず、石破首相の退陣と自民党総裁選の前倒し実施が一気に現実味を帯びる可能性も指摘されている。
「下野論」の台頭と党内情勢
こうした党内混迷の中、自民党内で秘かに広がるのが「下野論」だ。佐藤勉元総務会長や萩生田光一元政調会長ら有力議員は7月22日の会合で、「国民の信を失った以上、下野すべきだ」との認識で一致し、森山裕幹事長に伝えたとされる。同会合では、「野党の要求を受け入れないと予算案も法案も通らず、財源だけは自民党が用意することになる。野党のために政権を維持するようなものだ」といった意見が相次いだという。さらに、党四役の一角を担う木原誠二選挙対策委員長もテレビ番組出演時に、「下野も選択肢」と発言しており、党内の危機意識の深まりが垣間見える。
両院議員懇談会の紛糾:石破総裁への退陣要求
7月28日の自民党両院議員懇談会は、午後3時半に始まり、予定の2時間を大幅に超える約4時間半に及んだ。出席した236人のうち64人が発言に立ち、ひな壇に並んだ石破総裁ら党執行部に対し、一部に続投を求める声もあったものの、「辞めるべきだという人が圧倒的多数」(出席議員)という状況だった。
昨秋の総裁選で石破首相と争った小林鷹之元経済安全保障担当相は、「組織のトップとしての責任の取り方についてしっかり考えてほしい」と発言。また、中曽根康隆党青年局長は、同局の総意として「党がこのままだと沈んでしまう。変わらなくてはいけない」と、党執行部の総退陣を求める強硬な姿勢を示した。
自民党内で「下野論」が広がる中、進退が注目される石破茂首相と日本の政治状況
これに対し石破総裁は、「トランプ関税を巡る日米交渉の合意確認とその国内対策」などを理由に、続投の意向を改めて示した。一方、森山幹事長は、大敗した参院選の総括をまとめ次第辞任する可能性を示唆。執行部として8月中にけじめをつける姿勢を見せることで、早期退陣を要求する議員たちの理解を求め、党内の沈静化を図る狙いとみられる。しかし、党内の反発は収まる兆しを見せず、「石破降ろし」の声はさらに激しさを増す可能性がある。
党執行部の対応と今後の焦点
懇談会の紛糾を事前に予想していた森山幹事長は、28日の両院議員懇談会に先立ち、党内の実力者たちと相次いで接触を図っていた。岸田文雄前首相と国会内で、麻生太郎最高顧問とも都内でそれぞれ面会し、さらに菅義偉副総裁とも話し合ったとみられる。これらの会談の中で、森山幹事長は執行部の進退について説明した上で、党の分裂回避に向けて協力を求め、岸田氏らもこれを了承したとされている。
自民党内の混迷が深まる中、石破首相の進退問題と「下野論」の行方は、今後の政局を左右する重要な焦点となっている。党内実力者たちの調整と、森山幹事長が示す「けじめ」が、果たして党内対立を収束させることができるのか、あるいは「石破降ろし」の動きをさらに加速させるのか、その動向が注目される。