長年にわたり、米共和党の政治においてイスラエルへの無条件支持は揺るぎない必須条件とされてきました。しかし、ドナルド・トランプ前大統領の強力な支持基盤である「米国を再び偉大に(MAGA)」派によって、その正統性が今、大きく揺らぎ始めています。「特別な関係」の重要性をいくら説こうとも、彼らは耳を貸そうとしない傾向にあります。パレスチナ自治区ガザ地区における悲惨な飢餓と人々の苦しみの映像は、米国の中東介入がトランプ氏が掲げる「米国第一主義」の原則と本当に一致するのか、というMAGA派内部でくすぶっていた議論に、決定的な弾みを与えています。
「米国第一主義」とガザの人道危機
トランプ氏が初めてイスラエルと明確に対立する姿勢を見せたのは、28日のことでした。彼はガザで「現実の飢餓」が起きていることを公式に認め、イスラエルとイスラム組織ハマスとの紛争によって壊滅的な被害を受けたガザに、緊急の食料センターを設置すると表明しました。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がガザの飢餓危機を否定していることについて同意するかと問われた際、トランプ氏は「テレビを見る限り、あまり同意できない。ガザの子どもたちは本当に飢えているように見えるからだ」と異例の回答をしました。
ドナルド・トランプ前米大統領、ガザ人道危機に関するイスラエル政策への発言
このトランプ氏の発言は、専門家の間で大きな憶測を呼びました。米国の揺るぎないイスラエル支持という、これまで他の保守派の聖域と同様に盤石とされてきた立場が、MAGA派によってついに破られるのではないかという見方が広がっています。
MAGA派と専門家が示す「トーンの変化」
さらに、トランプ氏の副大統領候補であるJ・D・バンス上院議員も、オハイオ州でのイベントでこの問題に深く踏み込みました。「明らかに飢え死にしそうな幼い子どもたち」の「胸が張り裂けるような」映像に言及し、イスラエルに対し、さらなる人道支援物資のガザへの搬入を認めるよう強く求めました。
政治学者で元米外交官のマイケル・モンゴメリー氏は、この一連の「トーンの変化」には感情的な側面が大きいかもしれないとの見方を示しています。なぜなら、空爆によって破壊された街の惨状よりも、飢えに苦しむ子どもたちの映像の方が、人々の心に深く、直接的に響くからです。モンゴメリー氏は、「おそらく、飢餓を正当な戦争の手段と見なす文明人はいないからだろう」と述べ、飢餓という状況が普遍的な倫理観に反することを指摘しています。
米・イスラエル「特別な関係」のイデオロギー的挑戦
イスラエルは長らく、米議会において超党派の幅広い支持を得てきました。しかし、トランプ政権下で台頭した孤立主義的なMAGA派の存在は、長年の「特別な関係」を支えてきたイデオロギー的な基盤に対し、根本的な疑問を投げかけています。ガザにおける人道危機は、この米国内の政治的変化を加速させる要因となり、今後の米国の対イスラエル政策に大きな影響を与える可能性があります。
参考文献
- AFPBB News / 時事通信