中国ステルス戦闘機J-20、対馬海峡を飛行か – 日韓当局の未探知に波紋

中国の最新鋭第5世代ステルス戦闘機「殲-20(J-20)」が最近、大韓海峡の東水路、すなわち対馬海峡を飛行したことが確認された。しかし、香港のサウスチャイナモーニングポスト(SCMP)が報じたところによると、この事実は韓国と日本のいずれの当局にも正確に探知されていなかった可能性が高いという。この未探知の可能性は、J-20の優れたステルス性能と、地域の安全保障における新たな課題を示唆している。

中国の最新鋭第5世代ステルス戦闘機J-20(殲-20)が飛行する様子。その優れたステルス性能が注目されている。中国の最新鋭第5世代ステルス戦闘機J-20(殲-20)が飛行する様子。その優れたステルス性能が注目されている。

中国国営メディアがJ-20の飛行を報道

中国中央テレビ(CCTV)は7月27日、人民解放軍創設記念日(8月1日)を前に放送した特集シリーズの中で、精鋭空軍部隊である第1航空旅団が「バシー海峡と対馬海峡を飛行して台湾周辺を巡察した」と報じた。番組全体にわたって最新鋭のJ-20戦闘機の姿が登場し、SCMPは、第1航空旅団がJ-20が最初に配備された部隊であることから、J-20が直接この任務を遂行した可能性が高いと分析している。CCTVはJ-20の具体的な飛行日時や作戦名称については明示しなかったものの、この映像はCCTV軍事チャンネルの公式微博(ウェイボー)に掲載され、人民日報もこれを共有した。これは、中国が自国のステルス機の能力を誇示し、域内における戦略的プレゼンスを示すための動きであると解釈されている。今回の飛行は、単なる戦力誇示以上の意味を持つと見られている。

対馬海峡の戦略的重要性と未探知の波紋

SCMPは、対馬海峡を「韓国と日本の間の狭い戦略的水域であり、日本海と東シナ海をつなぐ要衝地」と指摘している。この地域は、米軍のTHAAD(高高度防衛体系)を含む、米国・韓国・日本の先端レーダー監視網が集中する区間でもある。にもかかわらず、今回のJ-20の通過は、韓国と日本のどちらの当局にも探知されず、報告されていないと報じられている。中国の軍事ブロガーである「淡然小司」も関連内容を取り上げ、「理論上、韓国と日本のレーダーは対馬海峡全域を監視する」とし、「今回の未探知事例は、J-20のステルス性能がすでに韓米日の先端レーダーを回避できるレベルに到達したことを意味する」と主張している。

J-20の性能と中国の軍事力強化

J-20は、中国が米国のF-35に対抗するために開発した第5世代ステルス戦闘機である。中国当局は、特殊なコーティングと構造設計により、レーダーに露出する断面の大きさがF-35に匹敵すると説明している。中国は年間120機のJ-20を生産しており、今年末までに400機のJ-20を運用する予定とされている。この急速な配備は、中国の航空戦力強化への強い意欲を示している。

過去の中国軍機・艦艇の動向と日中間の緊張

中国軍用機の大韓海峡東水路への進入は今回が初めてではない。2016年と2017年には、旧型のJ-11戦闘機やH-6K爆撃機が同水域を通り、東シナ海から日本海へと飛行した。また、2021年と2022年には、中国軍の艦艇が大韓海峡の東水路を通過して日本海に進入している。昨年11月には、中国とロシアの軍用機が日本海および韓国南側の韓国防空識別圏(KADIZ)に進入してから離脱する事案も発生した。KADIZは、自国の領空に接近する軍用航空機を早期に識別し対応するために設定される任意のラインであり、個別国家の主権が及ぶ領空とは異なるが、他国の航空機が進入する前に事前通報するのが国際慣例となっている。

SCMPは、今回の中国のJ-20飛行公開を、日本に対する牽制という側面から見ている。SCMPは、「今月初め、日本と中国は東シナ海で両国軍用機間の接近を巡り互いに非難した」とし、CCTVの報道が「中国人民解放軍創立98周年を控え、北京と東京の緊張が高まる中で出てきた」と伝えている。

今回のJ-20による対馬海峡飛行の可能性と、日韓当局による未探知の指摘は、中国の軍事力、特にステルス技術の進化と、それに伴う地域の安全保障環境の変化を強く示唆している。J-20のステルス性能が実際に各国のレーダー網を回避できるレベルに達しているとすれば、今後の警戒監視体制や防衛戦略に大きな影響を与えることになるだろう。日中間の緊張が高まる中で、こうした中国軍の動向は引き続き国際社会の注目を集めることとなる。


参考文献

  • SCMP (South China Morning Post) 報道: 「中国の第5世代ステルス戦闘機J-20、対馬海峡を飛行…日韓探知できず」 (Yahoo!ニュース経由)
    Source link
  • 中国中央テレビ (CCTV)
  • 人民日報
  • 軍事ブロガー「淡然小司」