令和には考えられない!? 車名がそのまま曲名になった懐かしの名曲3選

歌は時代を映し出す鏡であり、その時代の世相や文化を色濃く反映します。特に1970年代から1990年代にかけては、自動車が単なる移動手段に留まらず、若者文化やライフスタイルの中心に位置していた時代でした。この頃には、車種名がそのまま曲名に冠されたり、歌詞に車の名前が登場したりする楽曲が数多く生まれ、ヒットチャートを賑わせました。現代の音楽シーンでは滅多に見られない、車名がダイレクトにタイトルとなった名曲の数々を、当時の自動車文化や背景と共に振り返ります。

日本の自動車と音楽文化の黄金時代を象徴する、車名がタイトルになった名曲の数々日本の自動車と音楽文化の黄金時代を象徴する、車名がタイトルになった名曲の数々

フィアットがロックの中に溶け込む

1976年にリリースされた矢沢永吉さんのセカンドアルバム「A Day」に収録されている「真っ赤なフィアット」は、イントロから心を掴まれる洒脱なブルージーミディアムファーストテンポの楽曲です。歌詞には「真っ赤なフィアット飛ばす」とあり、車名「フィアット」が計5回登場します。当時のフィアットといえば、コンパクトな「500」のイメージが強いかもしれませんが、1970年代は「124スパイダー」のようなオープンクーペや、「130」「131」「132」といった堅実なセダンが主流でした。この曲を通じて、当時のフィアットが持つ多様な顔や、ロックンロールの世界観との融合を感じることができます。

初期型コルベットを歌ったユーミンの名曲

「日本の歌謡界の女王」松任谷由実さんが1978年にリリースした6枚目のオリジナルアルバムには、来生たかおさんとのデュエット曲「Corvette 1954」が収録されています。この曲のタイトルにある「1954」は、シボレー・コルベットの初代モデルであるC1型が登場した年を指します。スチール製フレームに、量産車として初めてFRPボディパネルを貼り付けたC1型は、特徴的なヘッドライトと流れるようなボンネット形状が印象的でした。ミディアムバラードの心地よいメロディーに乗せて歌われるコルベットは、当時の先端をいくアメリカンスポーツカーの象徴であり、開放感あふれるドライブシーンを想像させます。

ご本人もインスタで紹介しているジープ

1990年に発売された長渕剛さんの12枚目のオリジナルアルバムに収録された「JEEP」は、アルバムに先駆けてリリースされた23枚目のシングル曲でもあります。ジープに乗ってドライブしながら、過去への後悔と未来への決意を綴る歌詞は、聴く者の心に深く響きます。サビの最後に歌われる「driving with my JEEP」というフレーズは、長渕さん自身の体験が色濃く反映されていることを示唆しています。実際、2023年8月には長渕さん自身のインスタグラムで、初代YJ型ジープラングラーと共に写る写真が投稿され、30代の頃にこのラングラーで九十九里浜を走った思い出が明かされました。初代YJ型にのみ採用された角目ヘッドライトは、今見ても無骨でクールな魅力を放っています。

結びに

今回ご紹介した楽曲は、単に車種名が使われているだけでなく、当時の車が持つステータス、ライフスタイル、そして人々の心情と深く結びついていたことを教えてくれます。自動車が単なる移動手段ではなく、文化の一部として、あるいは自己表現の象徴として輝いていた時代。これらの名曲たちは、そんな豊かな自動車文化への郷愁と、音楽の持つ時代を刻む力を私たちに再認識させてくれます。


参考資料: