「どこへ?」カムチャツカ地震津波警報下、訪日外国人が感じた不安と日本の対応

7月30日午前、ロシアのカムチャツカ半島付近でマグニチュード8.7の巨大地震が発生し、日本各地に津波警報や津波注意報が発令されました。特に北海道から近畿地方の太平洋沿岸には津波警報が、四国・九州には津波注意報が出され、日本列島は一時緊迫した状況に包まれました。地震や津波に慣れない訪日外国人観光客はどのような心境でこの状況を迎えたのか、そして彼らを受け入れる宿泊施設はどのように対応したのか、現場の声から探ります。

異例の津波警報と「TSUNAMI」「EVACUATE」表示

カムチャツカ半島沖で発生したマグニチュード8.7の大地震を受け、日本の各メディアは津波に関する報道特別番組を放送しました。番組中、テレビ局は「津波!逃げて!」という緊迫感のあるテロップを繰り返し表示。これは日本人だけでなく、外国人向けに「TSUNAMI」「EVACUATE(避難して)」という英語表記が交互に表示される異例の多言語対応でした。

NHKの津波警報テロップ、英語表記「TSUNAMI」「EVACUATE」が交互に表示されているテレビ画面。NHKの津波警報テロップ、英語表記「TSUNAMI」「EVACUATE」が交互に表示されているテレビ画面。

訪日外国人の「未知の災害」体験:恐怖と混乱、そして安心

来日したばかりのフィンランド人30代男性は「昨日初めて日本に来たばかりで、今朝いきなり『TSUNAMI』の文字を見てすごく驚いた。フィンランドでは大きな地震も津波も経験がない。東日本大震災の被害を知っているので怖かった」と当時の恐怖を語りました。しかし、ホテルのフロントに問い合わせたところ「日本で地震が起きたわけではないが、海や川には近寄らないでください」と親切に対応され、安心感を覚えたといいます。

カナダから来た20代男性は「朝、スマホのニュースで地震を知り、念のため家族や友人に連絡した。カナダは地震が少ないのであまり気にしていない様子だった」と話しました。彼の友人は特別番組を見て「『TSUNAMI』『EVACUATE』の文字はあったが、カナダでは全く馴染みがなく、何をすればいいか分からなかった。『逃げろ』と言われても『どこへ?』という感じで、ただただ不安な時間だった」と困惑を明かしました。一方で、周囲の日本人が焦っている様子がなかったため、「大きな被害はなかったのか」と冷静に判断し行動できたとも述べました。この経験は、地震に馴染みのない外国人にとって、視覚的な情報だけでなく具体的な避難場所や避難手段を示す多言語対応の重要性を浮き彫りにしています。

ホテル現場の対応と安否確認の動き

外国人観光客が宿泊する都内のホテルでは、地震のニュースを見た海外の家族や友人から、安否を心配する国際電話が相次ぎました。都内にある外国人観光客向けゲストハウスAの従業員は「ヨーロッパからの国際電話で『家族は大丈夫ですか?』という問い合わせがあった」と語りました。個人情報保護のため詳細は伝えられなかったものの、遠く離れた家族の安否を気遣う国際的な関心の高さが伺えます。

別のゲストハウスBのフロント担当者も「ロビーで津波について話していると思われる外国人観光客が3名ほどいたが、特に焦っている様子はなく、『大丈夫だよ、心配しないで』と通話相手に伝えていた」と証言しました。異国の地で大切な人の安全を案じる気持ちは世界共通であり、宿泊施設側も迅速かつ的確な情報提供が求められる状況でした。

今回のカムチャツカ地震に伴う津波警報は、日本における災害時の訪日外国人対応の現状と課題を再認識させる機会となりました。多言語での警報表示は有効である一方、「どこへ避難すれば良いのか」「具体的な行動は」といった、より詳細で実践的な情報の多言語化の必要性が浮き彫りになりました。日本が国際観光立国としてさらなる発展を目指す上で、あらゆる災害において、訪日外国人が安心して滞在し、安全に避難できるための情報提供体制の強化は不可欠です。

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