Snow Manが「ジャニーズ」を口にしない複雑な胸中:ファンと伝統の狭間で

人気アイドルグループSnow Manが、新アルバム『音故知新』の発売を記念して公式YouTubeチャンネルを更新。11月5日にリリースされる5thアルバムに収録されるユニット曲のミュージックビデオ(MV)をメンバー全員で鑑賞する様子が公開され、ファンからの大きな注目を集めています。その中で、彼らが交わした言葉が、業界の変化とアイドルの伝統を巡る議論を再び巻き起こしています。

メンバーが避ける「ジャニーズ」の呼称、その背景

MV鑑賞会の最中、特にファンが注目したのは、目黒蓮と阿部亮平のユニットソング『ART』に関するコメントでした。渡辺翔太が「上品さもあってアイドルらしさもある」と感想を述べると、ラウールが「弊社の感じ」と発言。これに渡辺も続けて「事務所好きな人にはたまらない」と語る場面があり、「ジャニーズ」という具体的な5文字を避ける配慮が見て取れました。

さらに、目黒蓮は「先輩たちのかっこいい感じ、この会社の伝統みたいなものを大切にしたいっていうので作っていった」と楽曲制作の背景を説明。阿部亮平も「事務所あるあるが詰め込まれてる」と笑顔でコメントしましたが、ここでもやはり、現在の正式名称である「STARTO ENTERTAINMENT」や旧社名の「ジャニーズ」という言葉は使用されませんでした。

ファンがSNSで示した「複雑な感情」

このメンバーの言動に対し、ソーシャルメディアX(旧Twitter)上では、ファンから様々な声が寄せられ、複雑な感情が広がっています。
《マジで「ジャニーズ」って名前返してほしい》
《頑なに新しい事務所の名前を言わないところに、ジャニーズとしての誇りと愛を感じて切ない》
といったコメントが相次ぎ、ファンはグループが背負う伝統と、会社名変更という現実の間で揺れ動くタレントの胸中に寄り添いつつも、旧社名への強い愛着をのぞかせました。

Snow Manが新アルバム「音故知新」のユニット曲MV鑑賞会で語る様子Snow Manが新アルバム「音故知新」のユニット曲MV鑑賞会で語る様子

STARTO ENTERTAINMENT設立と「ジャニーズ」ブランドの重み

Snow Manが所属するSTARTO ENTERTAINMENTは、故・ジャニー喜多川氏による性加害問題が表面化したことを受け、旧ジャニーズ事務所の再編として2023年に設立された新会社です。問題発覚当時、多くのテレビ局や取引先企業から「社名を含めた抜本的な改革」が求められ、当初は社名維持も検討されたものの、「創業者の名前を使い続けることで被害者が苦しむ可能性がある」との判断から、タレントマネジメントを担う新会社が発足するに至りました。

しかし、「ジャニーズ」という名前は、日本のアイドル史そのものを象徴するブランドであり、長年にわたり多くの人々に親しまれてきました。このため、各メディアではいまだに「旧ジャニーズ事務所」という表記が用いられることも少なくありません。社名変更によって生まれた「新しい呼び方の難しさ」は、ファンだけでなく、タレント自身も深く感じていることでしょう。特に、Snow Manのように「ジャニーズらしさ」や「事務所の伝統」を大切にしてきたグループにとって、その思いは一層複雑であると想像できます。

旧社名がなくなってから1年以上が経過しましたが、タレント自身が公の場で「STARTO ENTERTAINMENT(スタートエンターテイメント)」という名を口にする場面は依然として限られています。「弊社」「事務所」といった曖昧な表現の裏には、彼らが長年背負ってきた伝統への誇りと、変化せざるを得ない現実との間の葛藤が深く見え隠れしています。

まとめ

Snow ManのMV鑑賞会で見られた、メンバーによる会社名の言及を避ける様子は、旧ジャニーズ事務所からSTARTO ENTERTAINMENTへの移行が、タレントとファン双方にとって依然として複雑な感情を伴う過程であることを示しています。長年にわたる「ジャニーズ」というブランドが持つ歴史的重みと、現在の社名変更が突きつける現実の間で、彼らは伝統を守りつつも新たな道を模索しています。この繊細な状況は、日本のエンターテイメント業界が直面する大きな課題の一つと言えるでしょう。

参考文献