いよいよ公開される『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』では、鬼殺隊の精鋭である「柱」たちが集結し、上弦の鬼たちとの壮絶な戦いが繰り広げられます。この物語の核心に迫る激戦の中で、特に際立った活躍を見せるのが水柱・冨岡義勇です。彼の冷静沈着な佇まいの裏に秘められた圧倒的な戦闘能力、そしてその真価について、本稿では詳細に分析します。
冨岡義勇の卓越した戦闘能力とその軌跡
冨岡義勇は「水の呼吸」の使い手であり、鬼殺隊の「柱」の中でも古参の剣士です。彼は自身の能力に対して謙虚で、「柱」にふさわしくないとさえ考えている節がありますが、客観的に見ればその実力は群を抜いています。
例えば、「水の呼吸」の基本型を完璧に使いこなすだけでなく、彼自身が編み出したオリジナルの型「拾壱ノ型 凪(なぎ)」の存在は、その並外れた戦闘センスと応用能力を明確に示しています。「凪」は彼の代名詞とも言える技で、その後の戦いでも度々その有効性が証明されていきます。
過去の戦いでもその強さは際立っていました。「那田蜘蛛山編」では、炭治郎を限界まで追い詰めた下弦の伍・累を、まるで相手にならないかのように一瞬で撃破。その圧倒的な実力は読者に強烈な印象を残しました。「柱稽古編」では、風柱・不死川実弥との模擬戦で、互いの模擬刀が折れるまで一進一退の攻防を繰り広げ、その練度の高さと拮抗した実力を見せつけました。
そして、今回の「無限城編」では、さらにその真価が問われます。無限城へと落下した際には、炭治郎との見事なコンビネーションを披露。炭治郎のわずかな動きから次に繰り出す技を正確に把握し、それに合わせて自身も技を出すことで同士討ちを防ぐという、熟練した連携技は、炭治郎に「義勇さんが凄い……」「この人やばい」と驚嘆させるほどでした。
中でも特筆すべきは、上弦の参・猗窩座との死闘です。劇場版では、致命傷を負いかねない炭治郎を巧みに守りながら、猗窩座とほぼ互角の戦いを長時間にわたって繰り広げます。この一対一での激戦は、義勇の底知れない実力の高さを改めて浮き彫りにするものでしょう。
劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来の主要キャラクターと戦闘シーン
猗窩座戦で光る“守りの剣士”としての真価
猗窩座との戦闘において、義勇の最も注目すべき点は、猗窩座が放つ超高速の連打技「破壊殺・乱式」を完璧にいなしてみせたことです。この技は、かつて炎柱・煉獄杏寿郎に甚大なダメージを与えた強力な攻撃ですが、義勇は「拾壱ノ型 凪」によって、一切の傷を負うことなくこの猛攻を潜り抜けて見せました。
このことから、義勇の防御力は「柱」の中でもトップクラスに位置づけられると言えるでしょう。長時間にわたり致命傷を受けることなく猗窩座と渡り合える「柱」は、決して多くありません。最終的に彼が劣勢になったのも、日輪刀を折られたことが大きなきっかけであり、彼の剣技による防御がいかに鉄壁であったかを物語っています。
「水の呼吸」を繰り出す水柱・冨岡義勇の戦闘シーン
冨岡義勇が“人を守る力”を極めた理由:過去と決意
義勇がこれほどまでに防御力に秀でているという設定は、彼のこれまでの人生や精神性と深く結びついています。彼の人生において、「人を守ること」そして「人に守られること」は極めて大きな意味を持つのです。
幼少期、義勇は姉の蔦子と二人で暮らしていましたが、ある日突然鬼の襲撃を受けます。その際、蔦子は自身の結婚式の前日にもかかわらず、弟である義勇を鬼から隠し、命と引き換えに彼を守り抜きました。
また、鬼殺隊の最終選別では、宍色の髪をした少年・錆兎と出会い、幾度となく彼に助けられました。錆兎は山にいたほとんどの鬼を一人で倒し、多くの受験者の命を救いましたが、最終的には命を落としてしまいます。義勇自身は一時期その記憶を忘れていましたが、錆兎は彼に「姉が命をかけて繋いでくれた命を、さらなる未来に繋いでいくように」と叱咤していました。
このような壮絶な過去を振り返ると、義勇が物語のさまざまな場面で「人を守るため」に動いていることが理解できます。例えば、物語の序盤で、鬼と化して始末されようとしていた禰豆子を命がけでかばったのは、他でもない冨岡義勇その人でした。
アニメ版では一部カットされていますが、原作の猗窩座戦では、「もう二度と目の前で家族や仲間を死なせない」「炭治郎は俺が守る」という強い決意を胸に、自らの命と引き換えにしてでも炭治郎を守ろうとする場面が描かれています。そして、その義勇の献身的な姿こそが、猗窩座の心をわずかに揺さぶるきっかけにもなりました。
「人を守る」という揺るぎない強い決意から生まれた、誰よりも優れた防御力を持つ剣士、それが冨岡義勇なのです。『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』を視聴する際には、彼の繰り出す日輪刀の一撃一撃、そしてその鉄壁の防御に込められた深遠な想いに想像力を巡らせてみてはいかがでしょうか。
©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable