高市早苗首相の台湾有事に関する発言が発端となり、日本のアーティストによる中国公演が相次いで中止されている。この政治的緊張が文化交流に影を落とし、関係者やアーティストから懸念の声が上がっている。
高市首相の台湾有事発言とその波紋
高市首相は11月7日の衆院予算委員会で、台湾有事について「戦艦を使った武力行使を伴うものであれば『存立危機事態』になりうる」との見解を示した。中国側はこの発言に強く反発し、日本への渡航自粛や日本産海産物の輸入停止措置などを講じている。政治担当記者は「その影響は文化交流にも及んでいます」と指摘する。
相次ぐ日本人アーティストの中国公演中止
この余波を受け、複数の日本人アーティストの中国公演が中止または延期となっている。ボーイズグループJO1は、11月28日に広州市で予定されたファンイベントの中止を17日に発表。ギタリスト高中正義も、北京公演の延期を20日に公式サイトで表明した。
また、19日にはシンガーソングライターKOKIAの北京コンサートが開演直前に突然中止。「会場の設備故障」と説明されたが、真相は不明だ。
アーティストたちの声:政府への批判と文化交流への懸念
相次ぐ公演中止に対し、一部アーティストが異議を唱えている。シンガーソングライター七尾旅人氏は11月20日、自身のX(旧Twitter)で「高市氏の軽率な自己アピールで、東アジアの安定が大きく損なわれた」と発信。「その余波は文化交流にも及び、日本人音楽家の中国公演許可が続々取り消しになっている」と憂慮し、「信頼は相互に時間をかけて紡ぐものだが、壊れる時は一瞬。隣国の仲間たちに対して申し訳ない」と続けた。
同じくシンガーソングライター春ねむり氏も20日、Xで「黙るな。怒れ。抗議しろ」と呼びかけ、「お前の音楽がクソ政府のクソ政治家に奪わせるな」とミュージシャンに檄を飛ばした。さらに、「ミュージシャンがノンポリぶったり冷笑したり黙ったりしている間に、演奏や文化交流の場が失われていく」とも言及している。
独立系アーティストが声を上げる理由
政治的問題に対し、独立系アーティストが声を上げる背景について、芸能プロ関係者は次のように説明する。「メジャーレーベル所属アーティストは、中国への影響やスポンサー企業との関係から、政治的発言を避けがちです。一方、独立系アーティストは、所属に縛られずに自身の思想や時局への発言をダイレクトに行うことができるのでしょう」。
しかし、「発端は高市氏の発言だとしても、日本政府が中国での公演を禁止しているわけではありません。市民の文化活動を規制しているのは果たしてどちらなのか、という視点は忘れたくない」と重要な点を指摘した。
高市早苗首相(写真・JMPA)
高市首相の台湾有事に関する発言が、日中間の政治的緊張を高め、日本人アーティストの中国公演中止という文化交流への具体的な影響を及ぼしている。この状況は、表現の自由や国際的な文化交流の脆弱性を示し、政治と文化の関係性について再考を促すものだ。今後の日中関係の動向と共に、文化交流の場が再び開かれることを多くの人々が願っている。





