ニュルンベルク動物園、ヒヒ殺処分に抗議活動激化:欧州の動物園倫理と個体数管理の課題

ドイツ南部ニュルンベルクの動物園が、飼育していたギニアヒヒ12匹の殺処分を実施したと発表し、これに対し激しい抗議活動が起こり、不法侵入者7人が逮捕される事態に発展しました。個体数過剰が原因とされていますが、この問題は欧州の動物園が抱える個体数管理の課題と動物福祉を巡る倫理的議論に再び注目を集めています。

ニュルンベルク動物園のヒヒ殺処分:背景と経緯

殺処分を行ったのは「ティアガルテン・ニュルンベルク」です。英BBCの報道によると、同園は昨年2月の時点で、アフリカ西部原産のギニアヒヒの飼育環境が過密状態に陥っていることを理由に殺処分の方針を発表していました。2009年に完成したヒヒの施設の適正飼育数は25頭であるにもかかわらず、実際には40頭を超え、ヒヒ同士の衝突が増加するなどの問題が発生していたといいます。

ティアガルテン・ニュルンベルクは、この問題解決のため、2011年以降、フランスや中国の動物園への移送や避妊手術を実施してきました。しかし、これらの対策にもかかわらず、ヒヒの頭数は年々増加の一途を辿っていました。昨年の方針発表後も、両国に加えスペインの動物園との個体移送交渉が頓挫したため、妊娠中の雌などを除いた12頭のヒヒが射殺されました。

ニュルンベルク動物園のギニアヒヒたち。過密飼育の問題を抱え、一部が殺処分の対象となったヒヒの群れ。ニュルンベルク動物園のギニアヒヒたち。過密飼育の問題を抱え、一部が殺処分の対象となったヒヒの群れ。

殺処分当日の抗議活動と反発

殺処分に反対する抗議者たちは連日活動を続けていましたが、殺処分当日、動物園側が「運営上の理由」として急遽閉園措置を取ったことで、事態はさらに悪化しました。怒った抗議者たちは動物園のフェンスを乗り越えて敷地内に不法侵入し、複数人が手に接着剤を塗って地面に張り付くなどの抵抗を見せました。この騒動により、7人の逮捕者が出ました。

欧州動物園における個体数管理と倫理的議論

欧州の動物園における個体数管理を巡る殺処分は、過去にも大きな論争を巻き起こしています。最も有名な例は、2014年にデンマークの動物園で発生した「マリウス」という名の2歳のキリンの殺処分事件です。繁殖プログラムの対象個体と遺伝子が近いことを理由に殺処分され、その解体された肉がライオンの餌として与えられ、その様子がオンラインで生中継されたことで国際的な非難を浴びました。

今回のヒヒたちも、研究用サンプル採取後に肉食動物の餌として与えられたと報じられています。ティアガルテン・ニュルンベルクのダグ・エンケ園長は、今回の殺処分について「何年も検討した結果であり、正当な最終手段」であると説明しています。しかし、動物愛護団体は、動物園の行動を「無責任で持続不可能な繁殖を行ったのが原因」であると強く非難し、刑事告訴する方針を示しています。

結論

ドイツ・ニュルンベルク動物園でのギニアヒヒ殺処分は、動物園における個体数管理の難しさ、動物福祉と倫理的責任のバランス、そして公衆の動物に対する意識といった、多岐にわたる課題を浮き彫りにしました。この事件は、単一の動物園の問題に留まらず、欧州ひいては世界の動物園業界全体が直面する複雑な倫理的ジレンマと、持続可能な運営モデル構築の必要性について、今後の議論をさらに深化させることになるでしょう。


参考文献:

  • Yahoo!ニュース(引用元:産経新聞、BBC)