2025年7月18日(金)に公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』は、その中心人物である「上弦の参」の鬼・猗窩座(あかざ)の戦闘シーンが大きな話題を呼んでいます。特に彼が使用するある「得意技」と、その背景に隠された物語がファンの間でさまざまな考察を生んでいます。
劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章の第2弾キービジュアル。中央に「上弦の参」猗窩座が描かれている。
冨岡義勇戦で披露された「鈴割り」の威力
『無限城編 第一章』の物語中盤では、主人公・竈門炭治郎と水柱・冨岡義勇(とみおかぎゆう)が、血鬼術「破壊殺」を操る猗窩座と激しい戦いを繰り広げます。この戦闘の途中で、冨岡義勇と猗窩座が1対1で対峙する場面があり、そこで猗窩座は驚くべき技を披露します。
猗窩座は、義勇が渾身の力で振り下ろした日輪刀を、側面から拳の一撃で真っ二つにへし折るという離れ業を見せます。そのあまりの威力に、さすがの義勇も驚愕を隠せませんでした。この衝撃的な技こそが、猗窩座の「鈴割り」であり、その背後にある深い物語が原作ファンの間で議論を巻き起こしています。
人間時代からの得意技、狛治の「鈴割り」秘話
驚くべきことに、猗窩座は鬼になる以前の人間時代から、この「鈴割り」を自身の得意技としていました。『無限城編 第一章』の終盤では、人間だった頃の猗窩座、すなわち「狛治(はくじ)」の壮絶な過去が描かれます。父の死後、自暴自棄となり暴れてばかりいた狛治は、「素流(そりゅう)」という武術を極めた男・慶蔵(けいぞう)と出会います。慶蔵の道場で修行を積みながら、病弱な娘・恋雪(こゆき)の看病をする日々を送ることになります。
人間時代の狛治が「鈴割り」を使ったエピソードは、実は原作本編では詳しく描かれておらず、コミックス18巻の「設定こぼれ話」で語られています。ある時、病弱な恋雪が、かねてより彼女に想いを寄せていた隣接する剣術道場の跡取り息子に無理やり外へ連れ出され、喘息の発作を起こしてしまいます。恐れをなした跡取り息子は恋雪を放置して逃げ出し、もし狛治が見つけていなければ、恋雪は命を落とすところでした。
この一件に激怒した慶蔵は剣術道場に試合を申し込み、そこで狛治はたったひとりで9人もの相手を圧倒的な強さで打ち倒します。そして、二度と恋雪に近づくなと忠告された跡取り息子が逆上し、真剣で狛治に斬りかかった際、狛治はその刀を「鈴割り」で側面から叩き折ったのです。「鈴割り」は、狛治が最も得意とする技だったとされています。
悲劇へと繋がる「鈴割り」の記憶
それから数年後、狛治は恋雪と夫婦になる約束を交わします。しかし、剣術道場の跡取り息子とその門下生たちの企みにより、素流道場の井戸に毒が盛られ、恋雪と慶蔵は毒殺されてしまいます。愛する者たちを失った怒りと悲しみにより、狛治は跡取り息子を含む剣術道場の関係者67名を素手で惨殺しました。道場の面々が剣術の使い手であったにもかかわらず、「鈴割り」を駆使する狛治の敵ではなかったと語られています。
猗窩座の人間時代の背景と深く関連する「鈴割り」に対し、ファンからは「人間だった頃からの得意技で、血鬼術じゃなく本人の技量って凄すぎる」「鬼になっても鈴割りとか白刃取りとか使うのって、昔習って覚えて、ひとつずつ自分の糧にしていった喜びとか希望の強い記憶が強いからなのかな」「あらゆる技のなかで鈴割りだけ人間時代から得意なの悲しい」「狛治が一番得意としていた技を、義勇さんとの戦いで最後までそれをしなかった猗窩座……なんか泣ける」といった、多岐にわたる感想や考察が寄せられています。
ファンからの熱い考察と映像化への期待
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章』における「鈴割り」が披露されるシーンは、冨岡義勇を相手に一瞬で技が炸裂し、その後に何が起こったのかをリプレイで解説する演出が施されており、そのかっこよさが好評を博しています。しかし、剣術道場との試合を含む猗窩座の人間時代の「設定こぼれ話」は、今回の映画では詳細に映像化されていません。SNS上では、今後『無限城編 第一章』のエピソードがテレビアニメとして放送される際に、これらの未映像化部分が追加で描かれることを望む声が多数挙がっています。
人間時代の狛治が使った「鈴割り」は、その技のあまりの美しさに当時の剣術道場主が感動し、素直に非を認めたとされるほどでした。この深い物語を持つ技が、今後どのように映像で描かれるのか、ファンの期待は高まるばかりです。
出典: https://news.yahoo.co.jp/articles/8723fd05327545a657734de96e603d105d2d662c