「達成感ゼロで最初の5年が辛かった」リクルートで24年営業一筋だった男性が「47歳で第一子&専業主夫」になったリアルな感想

近年、45歳以上で第一子を授かる男性の割合は増加の一途を辿っています。20年前は67人に1人だったのが、今や23人に1人(厚生労働省「人口動態統計」に基づき筆者集計)と、決して珍しいことではなくなりました。しかし、「アラフィフからの子育て」と聞くと、経済面や体力面での負担を懸念する声も少なくありません。本連載では、そうした社会の認識とは裏腹に、当事者である45歳以上の「パパデビュー」男性たちが、実際のところどのような子育てライフを送っているのか、そのリアルな声に耳を傾けます。

リクルート出身の専業主夫、河野さんのポートレート。47歳で第一子を授かり、子育てのリアルを語る男性の表情。リクルート出身の専業主夫、河野さんのポートレート。47歳で第一子を授かり、子育てのリアルを語る男性の表情。

今回は、第7回として、リクルートで24年間営業職として活躍し、現在は専業主夫として子育てに専念する河野さん(57歳)にお話を伺いました。本記事は後編で、彼がリクルート時代の経験をどのように子育てに活かしているのか、その具体的な取り組みと、直面する課題について深掘りします。

リクルートでの学びが子育てにどう活かされているか

専業主夫として家庭を支える河野さんですが、彼の子育てには少なからず「リクルート時代」の学びが反映されています。「僕は社会人時代に”時間管理”の重要性を徹底的に叩きこまれたんです。朝9時に出社したら朝礼、9時10分からは電話…といったように、細かく具体的な行動計画が求められました。だから、ダラダラ過ごすことは許されないという意識が根付いています」。この経験は、子供の教育方針にも色濃く影響しています。

河野さんが小学4年生の長男に課すルールは非常に明快です。朝6時に起床したらすぐにタブレット学習を開始し、それが終われば7時までは自由に過ごす。学校から帰宅したら、ランドセルは所定の位置に置き、まず水を飲み、トイレに行く。その後はすぐに宿題に取り掛かり、時間制限を設けてその時間内に終わらせる、といった一連の行動を毎日指示しています。これは、彼自身が経験してきた効率的な時間・行動管理のノウハウを、子供にも身につけてほしいという強い願いから来ています。

現実の壁と揺るがない教育方針

しかし、理想通りに事が運ぶばかりではありません。「でも、現実はそうなかなかうまくはいかないです(笑)。口答えもしますしね」と河野さんは苦笑します。例えば、長男が反発して20分もトイレにこもってしまうようなことも日常茶飯事だと言います。それでも、河野さんが自身の教育方針を変えるつもりはありません。彼自身が時間管理と行動管理の重要性を身に染みて理解しているからこそ、その大切さを子供にも体得してほしいと強く願っているのです。

47歳で子育てを始めた元リクルート社員の河野さんと子供の後ろ姿。専業主夫としての子育ての日々を象徴する一枚。47歳で子育てを始めた元リクルート社員の河野さんと子供の後ろ姿。専業主夫としての子育ての日々を象徴する一枚。

河野さんのように、キャリアの中で培った経験やスキルを子育てに転用するケースは少なくありません。特に「時間管理」や「自己管理能力」といったビジネススキルは、子供が将来自立していく上で非常に重要な基盤となります。彼の経験は、単に「アラフィフ子育て」のリアルを伝えるだけでなく、子育てにおける親の役割や、社会で培った知識の家庭への応用について、示唆に富む内容と言えるでしょう。

まとめ

元リクルート社員で現在は専業主夫の河野さんの子育てライフは、45歳以上でパパになった男性が直面する現実と、そこから生まれる独自の教育哲学を浮き彫りにしました。特に、リクルートで培った徹底した時間管理のノウハウを子育てに応用する試みは、時に子供の反発に遭いながらも、将来を見据えた親の深い愛情と信念に基づいています。年齢を重ねてからの子育ては、体力的な挑戦だけでなく、これまでの人生経験をどう活かすかという知的な挑戦でもあることを、河野さんの物語は教えてくれます。彼の経験は、多くの親にとって、子育てのあり方を再考するきっかけとなるでしょう。