夏休みやお盆の時期を迎え、JR各駅の「みどりの窓口」では連日、長蛇の列が発生し、利用者の混雑が深刻化しています。かつては頼りになる存在として親しまれてきた有人窓口ですが、近年は利用者の減少や経費削減を理由としたJR東日本の削減方針により、その数が大幅に減少。この変化は、特にデジタル操作に不慣れな利用者にとって大きな負担となっています。本記事では、JR「みどりの窓口」でいま何が起きているのか、その背景にあるJR東日本の政策、そして利用者の生の声と専門家の見解を深掘りします。
夏のピーク期に長い行列ができているJRみどりの窓口の様子
主要駅で繰り返される「みどりの窓口」の行列
7月中旬の平日昼下がり、東京のJR上野駅「みどりの窓口」入口には「25分以上待ち」の表示が。隣接する指定席券売機9台は空いているものの、混雑する窓口を避け、券売機に向かったワイシャツ姿の中年男性は、画面を前に「あー、わからない」と声を上げ、結局窓口に引き返す場面が見られました。また、島根県出雲へ向かう別の男性も券売機操作に5分以上格闘し、係員を呼んでも問題が解決せず、「表示されない」と諦めていました。結局、新幹線きっぷのみを券売機で購入し、足早に立ち去る姿が見受けられました。同じ日、JR大宮駅の「みどりの窓口」では「45分待ち」となり、待機する人の大半を高齢者が占めていました。これらの光景は、主要駅で日常的に見られる混雑状況の一端です。
混雑の背景にある「みどりの窓口」大幅削減の経緯
近年、「みどりの窓口」の混雑は慢性化しており、JR東日本もこの状況を把握し、駅のポスターで「お盆・夏休み期間 券売機・窓口が大変混雑します!最寄りの駅でお早めに」と利用者に呼びかけています。しかし、この混雑の根源は、JR東日本が経費削減を目的に進めてきた「みどりの窓口」の大幅削減にあります。同社は2021年、2025年までに窓口を約7割削減する方針を発表。実際、2021年時点で440駅にあった窓口は、2022年4月1日には209駅まで減少しました。ところが、窓口の混雑や利用者からの苦情が相次いだため、同社は2022年5月に削減方針を「一旦凍結」しています。
専門家が指摘する有人窓口の必要性
鉄道ライターの小林拓矢氏は、JR東日本がさらに窓口を削減したい意向があるとしつつも、「利用者からの反発が大きくて、これ以上減らすのは無理でしょう」と分析しています。その理由として、訪日外国人を含め、「きっぷの買い方を知らない人が一定数いる」ことを挙げ、人が対応するサービスの不可欠性を強調しています。特に複雑な経路や割引を適用するきっぷの購入、あるいは機器操作に不慣れな利用者にとっては、対面でのサービスが必須であり、これが「みどりの窓口」が依然として必要とされる大きな要因となっています。
結論
JR「みどりの窓口」の混雑問題は、単なる季節的な現象に留まらず、デジタル化とコスト削減の波の中で、鉄道会社が多様な利用者のニーズにどう対応していくかという課題を浮き彫りにしています。特に高齢者やデジタル機器の操作に不慣れな人々、そして訪日外国人にとって、有人窓口の存在は依然として不可欠です。利用者の声や専門家の見解が示すように、有人窓口の存続を求める声は根強く、JR東日本には、利用者視点に立ったより柔軟かつ包括的なサービス提供体制の構築が求められています。