「なぜあの人が評価されるんだろう?」——あなたも、自分よりも能力が低いと感じる人が、なぜか上司から高く評価されているのを見て、苛立ちを感じた経験があるかもしれません。このような「なぜか評価される人」が持つ“戦略”について、あなたは深く考えたことがあるでしょうか。ベストセラー書籍『雑用は上司の隣でやりなさい』は、周囲に自身の「実力を“評価させる”戦略」を初めて明確に言語化した一冊です。発売直後から賛否両論を巻き起こし、「よくぞ言ってくれた」「暗黙知が“言語化”されている」「今まで気づいていなかった“新事実”」といった大きな反響が寄せられています。本記事では、この「職場で実力を適切にアピールする“見せ方”の技術」をまとめた本書の内容から、特に「出世する人/しない人の特徴」に焦点を当て、その核心をお伝えします。
ビジネスにおいて重要な情報を巧みに引き出せる人物が、あなたの職場にもいるかもしれません。彼らは総じて“会話の導入”が非常に上手です。そして、意外なことに、その導入で彼らが頻繁に活用しているのが「天気の話」なのです。多くの人が「天気の話=意味のない世間話」と誤解していますが、出世する人ほど、この一見“つまらない話”を戦略的に活用しています。本稿では、その具体的な方法と効果について深く掘り下げていきます。
ビジネスにおける雑談を通じて、相手から重要な情報を引き出そうとするビジネスパーソン
仕事の成果を左右する「会話の導入」:デキる人はなぜ世間話を使うのか
私の経験上、取引先や社内の関係者から巧みに情報を引き出せる人々は、間違いなく“会話の導入”が非常に優れています。彼らが最も得意とする導入方法の一つが、驚くかもしれませんが、ごく一般的な「天気の話」です。多くのビジネスパーソンは、「天気の話なんて、ただの世間話に過ぎない」と軽視しがちです。しかし、実際にビジネスで成果を出し、出世していく人々は、この“つまらない”と見過ごされがちな話を、戦略的な情報収集の第一歩として巧みに利用しています。彼らは、天気の話が持つ本質的な強みを理解し、それを最大限に活用することで、重要な情報を手に入れているのです。
「天気の話」が持つ二つの強力な武器:警戒心を解き、本題へ繋ぐ
天気の話には、ビジネスコミュニケーションにおいて非常に有効な二つの強力な強みがあります。これらを理解し活用することで、あなたは会話の中から“有力な情報”を引き出す能力を格段に向上させることができます。
1. ほどよいつまらなさ=警戒心を解く
天気の話は、誰にとっても“害がない”話題であり、極めてニュートラルな性質を持っています。政治や経済の複雑な話、あるいは個人のプライベートな話に比べて、相手は無意識のうちに防御力を大きく下げます。特に初対面の相手や、まだ信頼関係が十分に構築されていない段階では、この効果は絶大です。相手がリラックスし、心を開きやすい状態になるため、その後の本題への移行がスムーズになります。これは、コミュニケーションの障壁を取り除き、より深い会話へと進むための重要な準備段階となるのです。
2. 万能な導入口=どんな話題にもつなげられる
天気の話は、驚くほど多様な話題への「万能な導入口」となり得ます。具体的な例を見てみましょう。
-
「急に暑くなってきましたね」
- →「外回り、大変じゃないですか?」
- →「営業の皆さん、最近はどのエリアが特に忙しいんですか?」
この流れで、相手の業務内容や組織の動向、さらには業界のトレンドに関する情報をさりげなく探ることができます。
-
「夕立、昨日すごかったですよね」
- →「御社の工場のほうは大丈夫でした?」
- →「生産ラインとか止まったりしてませんか?」
これは、企業の事業継続性や生産状況に関する懸念を装いながら、潜在的な課題や最新の稼働状況を探るきっかけになります。
-
「今日は湿気がすごいですね」
- →「僕、夏バテ気味でして…」
- →「最近、皆さんどんなふうに体調管理されてます?」
このような個人的な話題から、職場の雰囲気、社員の健康状態、福利厚生に対する意識、さらにはチームワークや人間関係にまで話を発展させることが可能です。
このように、相手の業務状況、組織の動き、社内の人間関係、健康管理といった多岐にわたる切り口に、天気トークはシームレスに繋げることができます。最も重要なのは、“天気をきっかけに、本題へとスマートに探りを入れていく”という意識です。一見すると退屈な天気の話であっても、その使い方次第で、会話の中から価値ある“有力な情報”を引き出すことが可能になるのです。このスキルこそが、ビジネスにおける情報戦を優位に進める鍵となります。
「暑いですね」の一言から始まる情報戦:出世する人としない人の決定的な違い
もちろん、「暑いですね」というたった一言で、あなたの出世が即座に決まるわけではありません。しかし、その一言の“あと”をどのように展開するかが、仕事のできる人とそうでない人の間で、キャリアの分かれ道となる決定的な違いを生み出します。
出世しない人の特徴は、「ただ話すだけ」で終わってしまうことです。「今日は暑いですね」「そうですねー」で会話が終わってしまっては、せっかくの導入の機会が無駄になってしまいます。ビジネスは本質的に情報戦です。重要な情報は、意外なほど“なんてことない雑談”の中にこそ隠されています。だからこそ、「暑いですね」といった世間話を単なる雑談で終わらせるのではなく、それを強力な“武器”へと変えましょう。
次に誰かと会話をする機会があったら、ぜひこの「天気の話」の戦略的活用法を思い出してみてください。日常の何気ない会話が、あなたのキャリアアップのための重要な情報源となるはずです。
参考文献
- 『雑用は上司の隣でやりなさい』 (たこす 著)