2024年夏ドラマ:業界人が注目する「しあわせな結婚」の魅力とは?

2024年春クールで放送されたドラマは、視聴率の面では苦戦を強いられました。特に阿部寛主演の日曜劇場『アンチヒーロー』(TBS系)が11.0%を記録したものの、それに続く作品は『特捜9 final season』(テレビ朝日系)の8.1%と、多くの局で期待を下回る結果となりました。一方で、『続・続・最後から二番目の恋』、『波うららかに、めおと日和』、『あなたを奪ったその日から』(いずれもフジテレビ系)のように、見逃し配信やSNSでの反響が大きく、リアルタイム視聴に留まらないドラマの楽しみ方が浸透しているシーズンでもありました。このような背景の中、各局の夏ドラマがスタート。通常、夏休み期間と重なることで話題作が少ない傾向にあると言われますが、今年の夏クールではどのような作品がドラマ制作に携わる業界人の間で注目されているのでしょうか。

視聴率低迷の春ドラマ、多様化する視聴スタイル

春ドラマの平均世帯視聴率は全体的に低調で、多くの作品が二桁に届きませんでした。これは、視聴者がテレビの放送時間に合わせて視聴する「リアルタイム視聴」から、自分の好きな時間にスマートフォンやタブレットで視聴する「見逃し配信」へと移行していることを強く示唆しています。特に若い世代を中心に、SNSでの感想共有や考察が盛り上がりを見せており、作品の評価軸が視聴率だけではない時代に突入していると言えるでしょう。

業界人が注目する2024年夏ドラマ

例年、夏ドラマは比較的ライトな作品が多いとされていますが、プロの視点から見て、どのようなドラマに「本物」の光が当たっているのでしょうか。今回、民放キー局のドラマ製作に携わる30代のプロデューサーA氏に、今クールで「見たい」と感じる注目の作品について率直な意見を伺いました。

「しあわせな結婚」:プロデューサーが語るその真髄

A氏が「今クールの目玉」と太鼓判を押したのは、テレビ朝日系の木曜午後9時枠で放送されている『しあわせな結婚』です。

2024年夏ドラマ「しあわせな結婚」のメインキャスト、阿部サダヲと松たか子が演じる夫婦の姿。作品の雰囲気を伝えるキービジュアル。2024年夏ドラマ「しあわせな結婚」のメインキャスト、阿部サダヲと松たか子が演じる夫婦の姿。作品の雰囲気を伝えるキービジュアル。

この作品は、阿部サダヲ演じる独身弁護士・幸太郎と、松たか子演じる謎めいた女性・ネルラが運命的に結婚し、妻の秘密が明らかになっていくマリッジサスペンスです。A氏はまず、その「群を抜いた出演者の演技力」を絶賛しました。阿部サダヲのコミカルさとシリアスさのギャップ、松たか子のミステリアスかつ品のある立ち振る舞いは、どの場面を切り取っても「圧巻」だと言います。さらに、ネルラの父役・段田安則や叔父役の岡部たかし、若手刑事役の杉野遥亮といった脇を固める俳優陣も「存在感がピカイチ」と高く評価しています。

ストーリーについても、大人のラブストーリーとしての面白さに加え、15年前に起きた事件の謎がサスペンス要素として巧みに織り交ぜられているため、「飽きが来ない」とA氏は語ります。特に脚本家・大石静氏の「真骨頂」とも言える、何気ないセリフでシーンの深みを掘り下げる手法が光るとのこと。幸太郎とネルラの日常的な会話の裏に潜む不穏なムードや、迫力あるシーンでなくても恐怖心を抱かせる掛け合いが随所に散りばめられており、「最終話まで見続けたい」とA氏の期待は高まります。初回視聴率は8.5%と好調なスタートを切っており、今後さらなる注目を集めることが予想されます。

「しあわせな結婚」は、その卓越した演技と緻密な脚本によって、単なるラブストーリーに終わらない深い魅力を放っています。業界人が太鼓判を押すこの作品は、今クールを代表する一本となる可能性を秘めていると言えるでしょう。

参考文献